米2023会計年度の財政赤字はGDP比5.8%、債務残高98%、前年見通しから悪化

(米国)

ニューヨーク発

2023年06月30日

米国議会予算局(CBO)は6月28日、長期の経済財政見通しを公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、2023会計年度(2022年10月~2023年9月)の財政赤字はGDP比5.8%と、前年の見通し(3.9%、2022年5月30日記事参照)から大幅に悪化するとの見通しを示した。今回の見通しには、2022年8月に成立したインフレ削減法(2022年10月6日付地域・分析レポート参照)や6月に成立した財政責任法(2023年6月5日記事参照)など、前年の見通し公表以降に成立した法律などを反映した。

今回の見通しでは、2023会計年度から2053会計年度までの予算収支、債務残高などを試算した。2023会計年度は、歳入がGDP比18.4%に対し、歳出は同24.2%、差し引きの財政赤字は同5.8%、債務残高GDP比は98.2%を見込んでおり、債務残高GDP比も前年見通しから約2ポイント悪化した。

また、2023会計年度以降は、歳入・歳出ともに2026会計年度まで減少し続けるが、それ以降、両者ともに増加すると見込んでおり、歳入は2053会計年度にGDP比19.1%にまで増加すると試算している。しかし、高齢化の加速による医療費の増加や、基礎的財政収支の赤字継続によって金利コストが膨らむことで、歳出も大きく増加し、2053会計年度には29.1%まで達し、差し引きの財政赤字は10.0%まで拡大すると見込んでいる。こうした財政収支の悪化継続の結果、債務残高のGDP比は2029会計年度に過去最高の106.6%に達して以降も悪化し続け、2053会計年度に180.6%にまで拡大するとしている。

なお、経済の前提に関して、2022会計年度~2033会計年度の実質GDP成長率は平均1.9%、2034会計年度~2043会計年度は平均1.6%を見込んでいる。それ以降は平均1.5%の成長で推移する。消費者物価指数は全期間平均(2023会計年度~2053会計年度)で2.3%、長期金利(10年国債)は全期間平均で4.0%と置いている。

CBOは、こうした財政状況の悪化は政府の支払い能力に懸念を生じさせることから、米国債の利回り上昇(国債価格は下落)、期待インフレ率の上昇、通貨ドルの価値下落を招く可能性があるとしている。

(宮野慶太)

(米国)

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