経済産業省、インドとベトナムの通商案件をアジア大洋州地域での優先取り組み事項に

(日本、インド、ベトナム)

アジア大洋州課

2023年06月23日

経済産業省は616日、産業構造審議会の下に設置されている通商貿易分科会不公正貿易政策・措置調査小委員会が「2023年版不公正貿易報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を取りまとめたことを受けて、非市場的措置、経済的威圧、WTO上級委員会問題などのシステミックな問題への対応に加え、「経済産業省の取組方針PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を決定した。アジア大洋州地域では、インド、ベトナムの個別案件に優先的に取り組むことを示した。

1に、日本がWTO 紛争解決手続きに付託し、同手続きを通じて措置の撤廃・是正を求めていく案件として、インドに対する情報通信技術(ICT)製品に対する関税措置と熱延コイルに対するセーフガード(SG)措置が挙げられる。前者は20147月にWTO協定譲許表で無税としている通信機器の一部製品の関税率引き上げに始まる一連の措置、後者は20159月にインド政府が熱延コイルに対するSG調査・課税を実施した措置を指す。

2に、2国間協議やWTO 通常委員会などを通じて問題解決を図りつつ、WTO 紛争解決手続き活用の可能性を検討していく案件として、ベトナムのサイバーセキュリティー法、個人情報保護政令案が挙げられた。前者は20191 月に施行された一定の国内外の企業に対して、ベトナム国内にデータを保存する義務を課すとともに、一定の外国企業に対して、ベトナム国内に支店または代表事務所を設置する義務を課す法律を指している(2018年7月19日記事参照)。20235月に公布された後者は国外に個人情報を移転する場合の条件などを規定している(2023年5月2日記事参照)。

3に、措置の詳細や運用が不明なものの貿易・投資への影響が大きく、その制度設計や運用について特に注視が必要な案件として、202211月に公表されたインドのデジタル個人情報保護法案と同国の貿易救済措置の不適切な運用が記載された。前者は不明瞭な点が残されている点に課題がある(2022年12月12日記事参照)。後者は明確な根拠のない事由をもって、アンチダンピング(AD)措置やSG措置をインド政府が発動する点を日本政府は懸念している。

(新田浩之)

(日本、インド、ベトナム)

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