サイバーセキュリティー法公布、国内でのデータ保存が義務に

(ベトナム)

ハノイ発

2018年07月19日

サイバーセキュリティー法(24/2018/QH14)が6月12日、国会で可決され、同日付で公布された。同法は国家安全保障やサイバースペース上の秩序維持を目的に、国家や企業の責務を定めており、2019年1月1日に施行される。

同法の規定で最も問題視されているのが、インターネット上でサービスを提供する国内外企業に対する、ベトナム国内でのデータ保存および事務所設置義務(第26条)だ。国外企業の負担増やWTOルールなどへの抵触を懸念し、ベトナム商工会議所(VCCI)や米通商代表部(USTR)などが見直しを求めていたものの、法案に記載されていた国内でのサーバー設置義務がデータ保存義務に緩和されたにとどまった。

監視強化につながるとの懸念も

このほか人権保護団体からは、当局の要請によるコンテンツ削除やユーザー情報の提供などは監視強化につながるとして懸念が表明されている。当地報道によれば、グーグルやフェイスブックはベトナム政府の要請により、反体制的な動画やアカウントの削除に取り組んでいるとされ、当地日系IT企業からも「国外企業に国内でのデータ保存を義務付けることで、反政府系コンテンツの監視を強化する意図があるのではないか」との声が聞かれる。

同法については各地で抗議活動が行われるなど批判は根強いものの、政府は「同様の規定は多くの国に存在する」とし、安全保障上必要との見解を変えていない。

当地の日系IT企業の多くは日本向けオフショア開発を中心としているため、同法の直接的な影響は小さいとみられる。ただし、禁止行為の基準が抽象的で、罰則が具体的に示されていないなど、当局の運用次第では企業活動に影響を及ぼす可能性もあるとみられ、施行後の動向を注視する必要がありそうだ。

(佐々木端士)

(ベトナム)

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