個人情報保護政令が7月1日施行、通知義務など発生

(ベトナム)

ホーチミン発

2023年05月02日

ベトナム政府は4月17日、個人情報保護に関する政令13号(13/2023/ND-CP)を公布した。同政令は7月1日に施行となり、在ベトナム企業をはじめ、ベトナムの個人情報を扱う事業者などは対応を迫られる。

同政令の適用対象は、(1)ベトナムの機関、組織、個人、(2)ベトナムにある外国の機関、組織、個人、(3)国外で活動するベトナムの機関、組織、個人、(4)ベトナムでの個人情報の処理(注1)に直接従事、または関与する外国の機関、組織、個人。

個人情報の処理には、原則として情報主体から同意を取得することが義務づけられる(注2)。同意の意思は書面や音声、同意欄へのチェックなどの形式で明確に表明される必要があり、情報主体からの回答がない場合は、同意とみなされない。

また、情報主体には、同意を撤回する権利や、個人情報へのアクセス・修正・削除の権利、個人情報処理を制限する権利などが認められる。

個人情報の処理を開始する場合には、処理による影響を評価の上、所定の様式で関係書類を作成し、処理開始日から60日以内に公安省担当部局に提出する必要がある。

さらに、ベトナム国外にベトナム国民の個人情報を移転する場合は、個人情報の移転に関する影響を評価の上、関係書類を作成し、処理開始日から60日以内に公安省担当部局に提出する必要がある。移転完了後には、移転内容と担当組織・個人の連絡先の詳細を公安省担当部局に通知しなければならない。

同政令では、個人情報は基礎的な個人情報と機微な個人情報に区分される(注3)。機微な個人情報を扱う場合には、個人情報保護担当部署を設置し、責任者を任命の上、公安省担当部局に通知する必要がある。

規定に違反した場合の罰則は、別の政令で定めることになっており、現時点では明らかになっていない。なお、2021年4月時点の政令案では、違反が複数回に及んで被害が大きい場合には、処理者のベトナムでの売り上げの最大5%の罰金が科されると記載されていたため、注意が必要だ(2021年4月2日記事参照)

7月1日以降は、情報主体に対する通知や影響評価に関する書類の作成など、政令に定めた義務的措置に対応する必要があるため、個人情報の取り扱い状況に応じて準備を進めておく必要がある。

(注1)個人情報の処理は、個人情報の収集、分析、保存、開示、複写、暗号化、提供、破棄など。

(注2)情報主体からの同意の取得を不要とするのは、個人の生命や健康を保護するために関連する個人情報に直ちにアクセスする必要がある場合、その他、法律に基づく場合、国家安全保障や大規模災害などに関する緊急事態などに限定されている。

(注3)基礎的な情報は、氏名、生年月日、性別、出生地など。機微な個人情報は、政治的・宗教的見解、健康状態、遺伝情報、金融情報、位置データなど。

(阿部浩明)

(ベトナム)

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