2022年の平均賃金上昇率6.5%、過去10年で最大の上昇幅

(シンガポール)

シンガポール発

2023年06月02日

シンガポール人材省の「2022年賃金慣行レポート」(2023年5月29日発表)によると、同国の名目総賃金の平均上昇率は2022年に前年比6.5%と、過去10年で最高の上昇幅だった。しかし、消費者物価指数(6.1%上昇)を加味した2022年の実質賃金上昇率は0.4%となり、2021年(1.6%)を下回った。

2022年には、全ての産業セクターにおいて賃金の上昇幅が前年を上回った。最も賃金上昇幅が大きかったのは宿泊で、前年比9.7%増だった。新型コロナ禍に伴う海外渡航規制が解除されて観光業が大きく回復したところに、人手不足が重なり、賃金が大きく上昇した。次いで、金融(9.0%増)、不動産(8.6%増)、情報通信(7.7%増)の賃金上昇幅が大きかった(添付資料図参照)。2022年には黒字を計上した企業の割合は83.9%と、2021年(75.4%)に比べて拡大。全ての産業セクターにおいて、黒字企業の割合が上昇した。

景気減速見込みで2023年の賃金上昇率は軟化へ

人材省の調査によると、2023年に賃上げを予定している企業の割合は、2022年12月時点の調査時には25.3%だったのが、2023年3月に38.2%へと拡大した。同省はこの理由について、企業が厳しい人材獲得競争の中で人材を確保するため賃上げに踏み切っていると指摘した。

しかし、同省は2023年に賃金上昇率が軟化すると見込んでいる。同省は、「世界経済の減速が予想され、先行き不透明感が強まる中で、企業が賃上げにより慎重になる」との見方を示した。2023年のインフレも引き続き、高止まりが予想されるなか、名目ベースでも実質ベースでも賃金上昇幅が縮小する見込みだ。貿易産業省は5月25日、2023年通年のGDP成長率が公式予測「0.5~2.5%」の中央値付近にとどまるとの見通しを示していた(2023年5月31日記事参照)。また、シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)は4月14日発表の金融政策見直しで、インフレが今後数カ月間、高止まりすると予測を発表していた(2023年4月17日記事参照)。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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