金融政策を維持、インフレ緩和を見込む

(シンガポール)

シンガポール発

2023年04月17日

シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)は4月14日、金融政策を維持すると発表した。2021年10月に引き締めに転じ、2022年1月、4月、7月、10月まで5回連続で引き締めてきた(2022年10月19日記事参照)。

MASは政策金利ではなく、シンガポール・ドル(Sドル)の名目実効為替レート(NEER)の誘導目標帯(許容変動幅)を定める金融政策を実施している。MASは今回の発表で「輸入インフレ率がより低下し、コアインフレ率が2023年末までに大幅に緩和されると予想される中、SドルのNEERの誘導目標幅が中期的な物価安定にとって十分に厳しく、適切」とし、SドルNEER誘導目標幅について、上昇率を実勢水準で維持。誘導目標幅、さらには中心水準も維持するとした。

MASは今回の金融政策発表の中で、MASコアインフレ率(消費者物価全体から宿泊費と自家用道路交通費を除く)が「今後数カ月間は高止まりするが、2023年下半期には徐々に緩和され、年内は大幅に低下する」とし、2023年のMASコアインフレ率を「3.5~4.5%」(平均)と、前回の金融政策発表時の水準を維持した。MASは「世界の商品価格に対する新たなショックはさらなるインフレ圧力をもたらす可能性がある。しかし、先進国・地域(経済)の予想以上の低下がインフレ圧力の緩和につながる可能性がある」と、インフレの上昇と低下のリスクについて言及した。

成長に対するリスクは下向き

MASは今回の金融政策発表の中で「シンガポールの主要貿易相手国・地域の(経済)成長は2023年に鈍化し、過去2年間のペースを下回る」とし、「今年のシンガポールのGDP成長率の見通しは暗くなっている」との見方を示した。2023年の実質GDP成長率の予測値を「0.5%~2.5%」と、貿易産業省(MTI)と同水準(2023年2月14日記事参照)の見通しを示すとともに、「世界の成長見通しは依然として不透明」とし、「先進国・地域の金融引き締めの影響は金融システムの脆弱(ぜいじゃく)性によって増幅され、信用(貸し付け)の伸びがさらに抑制され、信頼感が損なわれる可能性がある。世界とシンガポールの成長に対するリスクは下方に傾いている」とした。

(朝倉啓介)

(シンガポール)

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