米FRB、約1年半ぶりに政策金利据え置きも年内の再引き上げを示唆

(米国)

ニューヨーク発

2023年06月15日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は6月13~14日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を、5月に発表した5.0~5.25%に据え置くことを決定した(2023年5月8日記事参照、添付資料図参照)。金利の据え置きは2022年1月以来となる。金利は2022年3月から異例のペースで引き上げられてきたが、5月の消費者物価指数(CPI)の伸び率が減速したことなどから(2023年6月14日記事参照)、今回はいったん様子見となった。なお、決定は参加者11人の全会一致だった。声明文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、「金利を目標レンジに安定的に維持することで、追加的情報と金融政策への影響を評価することが可能になる」とした以外、前回とほぼ同じ内容だった。

今回の会合では、全地区連銀総裁らを含めFOMC参加者18人による中長期見通しも示された。2023年の実質経済成長率は前回0.4%から1.0%に上方改定され、インフレ率(コアPCE)も前回3.6%から2023年3.9%に上方改定された。これに呼応して、FF金利水準のピークは2023年末に5.6%と、前回から0.5ポイント引き上げられており、年内の利上げ再開が想定されている。金利の引き下げが始まるのは2024年からと見通されているが、FF金利は同年末に4.6%(前回4.3%)、2025年末に3.4%(前回3.1%)と、いずれも前回の水準から切り上げられた。一方、両年の成長率とインフレ率は、ほぼ改定されなかった(添付資料表参照)。

ジェローム・パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、金利据え置きについて、「引き締めの完全な効果は感じられないが、金融政策が経済に与える不確実なラグや、信用収縮による潜在的な逆風に鑑みた」と述べる一方、「ほぼ全ての参加者が、インフレ率を2%に下げるためには、2023年内に追加の利上げが適切だろうと考えている」と述べた。最近の経済情勢については、引き続き労働市場はタイトだが、25~54歳の労働参加率がここ数カ月上昇しており、名目賃金の伸びは若干鈍化し、求人数は2023年に入ってから減少するなど、労働需給に緩和の兆しが見られるとした。次回7月会合での利上げ決定については、議論が必要であり、次回の会合は活発になるだろうと述べた。一方、今後の利上げのペースは、より緩やかなペースが理にかなっているかもしれないと述べた上で、FOMCの参加者は誰一人として2023年の利下げを想定していないと語り、前回と同様にその可能性を否定した。さらに、いまだに高止まりしているコアPCEの決定的な低下を待っていると述べた。

また、シリコンバレー銀行破綻から続く銀行の信用不安(2023年5月2日記事参照)について、パウエル議長は「銀行システムには、相当数の商業用不動産があり、その大部分は小規模な銀行が占めている。リスクが集中している銀行ではより大きな損失が発生するだろう。ただし、こういった事態は突然発生してシステミックリスクに発展するものではなく、しばらくは続くものだ」などと述べた。

(宮野慶太)

(米国)

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