輸入時の残留農薬検査のオペレーション変更に関する検討状況が明らかに

(タイ)

バンコク発

2023年06月13日

タイ輸出支援プラットフォームを運営する在タイ日本大使館とジェトロは6月9日、タイ保健省食品医薬品委員会事務局(FDA)が導入を検討している「Hold Test Release」(注1)の検討状況に関して、FDAから聞き取りを行った。「Hold Test Release」を巡っては、FDAが4月3日に政府関係者や民間事業者らと導入に向けた意見交換を行ったと発表していた(2023年5月1日記事参照)。

聞き取りによると、「Hold Test Release」に関してはコンセプトの検討が始まったところで、ほとんどの事項が決まっていないとのことだったが、現時点で明らかになった事項は次のとおり。「Hold Test Release」の対象は一部に限定されることが分かった。

  • 輸入青果物については、(1)Very high risk(注2)、(2)High risk、(3)Low riskの3つに分類の上、それぞれの残留農薬検査を行っているが(2021年7月7日記事参照)、「Hold Test Release」については、このうちの(1)Very high riskにのみ導入される。(2)High riskと(3)Low riskは対象とならない〔つまり、(2)High risk、(3)Low riskは留置の対象にならない〕。
  • (1)Very high riskについては現行でも、検査結果が出るまでは輸入業者に留置を命じているが、留置場所は輸入業者の倉庫でも良しとする柔軟な運用を行っている。しかし、「Hold Test Release」が導入されれば、空港や港の倉庫(FDAチェックポイント)での留置を徹底させる可能性がある。
  • 検査分析証明書(Certificate of Analysis: COA)を用意すれば、残留農薬検査そのものが免除され、「Hold Test Release」は行われない。
  • 「Hold Test Release」は、青果物以外の輸入食品についても導入される可能性がある。
  • 「Hold Test Release」の導入には解決すべき課題が多く、また、政府関係者だけでも財務省関税局、農業協同組合省など多岐にわたり、調整を了して導入するまでには相当の時間がかかる。
  • タイ事業者からは、食品安全を確保するための措置として導入そのものには良いことだと理解するものの、ビジネスの利便性を損なうことのないようにとの要望を受けている。

(注1)食品輸入時に、残留農薬などの検査結果が出るまでは食品を留置し、検査合格後に開放するという方針。現在行われている青果物輸入時の残留農薬検査では、一部(Very high risk)を除いては、検査結果が判明する前でも商品を流通させることは可能(留置なし)となっている(仮に基準値を超える残留農薬が検出された場合には、商品を回収することで対応)。

(注2)過去に問題が検出された特定事業者の特定の品目。

(谷口裕基)

(タイ)

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