欧州産業連盟、2023年下半期EU議長国スペインへの政策提言を発表

(EU)

ブリュッセル発

2023年06月07日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)と会員40団体は6月1日、2023年下半期のEU理事会(閣僚理事会)の議長国スペインへの政策提言書を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同連盟などは優先課題として、(1)新たな規制への対応にかかる負荷の軽減、(2)単一市場の統合深化、(3)エネルギーの安定供給、(4)生産能力向上のためのイノベーションや人材確保への支援、(5)重要原材料の安定確保や新規市場開拓につながる通商政策の実施を挙げ、欧州の国際競争力の強化と欧州への投資促進や雇用創出が必要と訴えた。

(1)規制関連では、新たに発表された各規制について、中小企業を中心に法令順守に係る企業負担がますます増大していると指摘し、全てのEU規制や戦略の策定にあたって産業競争力に与える影響を診断する必要があると主張した。さらに、複数の法案の中小企業への影響をより一貫的に評価することや、異なる法令で重複する内容を集約することなどにより、企業の報告義務を25%程度減らすといった産業界の要望への迅速な対応を求めた。

(2)単一市場の統合については、国ごとに認可が必要といった複数のEU加盟国での事業実施の障壁となる規制の撤廃や、EU共通のデータベースを活用するとした関税改革法案(2023年5月18日記事参照)の早期採択などを要望した。

(3)エネルギーの安定供給については、電力市場改革法案(2023年3月16日記事参照)の審議の進展や、近隣国も含め国境を越えるエネルギー取引を円滑化するインフラ整備への投資奨励によるEUのエネルギー市場の強靭(きょうじん)化が必要と指摘した。

(4)イノベーションや人材確保については、EU域内で技術開発を行いながらも、域外でスケールアップするEU企業が存在することや、求職者も含め労働者のスキル不足に起因する雇用のミスマッチなどを課題として挙げた。また、技術の開発研究のみではなく実地応用に対しても資金支援をすることや、加盟国の高度デジタル人材育成への取り組み強化(2023年4月26日記事参照)などを要請した。さらに、信頼性がある、投資や経済成長が可能な財政規律が必要と強調。EU財政規律枠組みの改革法案(2023年5月2日記事参照)に言及し、加盟国の財政支出の自律性を認めても、適切に予算執行することで、財政の健全化につながるとの認識を示した。

(5)通商政策関連では、同志国やG7といった多国間の枠組みとの連携強化や、自由貿易協定(FTA)の締結交渉や合意済みFTAの批准の推進を提言。対中関係については、EUの経済的・政治的利益を擁護して互恵関係を実現する必要性を認識しつつ、増大するリスクを考慮に入れたバランスが取れた関係を構築すべきとした。

(滝澤祥子)

(EU)

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