欧州委、EU市民のデジタル教育に関する勧告案を発表

(EU)

ブリュッセル発

2023年04月26日

欧州委員会は4月18日、加盟国に対してデジタル教育の強化を求める勧告案を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。勧告案は、各加盟国政府が担当省庁や地方政府と一丸となって取り組むという「政府全体」アプローチを採用した上で、加盟国ごとにデジタル教育に関する国別戦略を策定すべきとしている。

EUは、欧州デジタル化政策(注1)のもと、経済だけでなく社会全体のデジタル化を目指しており、そのためにはデジタル教育や職業訓練の改善が急務としている。そこで、EUでは、政策プログラム「デジタル化の10年間への道」(注2)を設置。この中で、2030年までのデジタル目標(2021年3月12日記事参照)を規定し、その第1の柱として、一般市民のデジタルスキルの向上と高度デジタル人材の育成を掲げている。今回の欧州委の提案は、こうした社会全体のデジタル化の実現において実施が求められる政策を加盟国に勧告するものだ。欧州委は、2023年末までにEU理事会(閣僚理事会)による勧告案の採択を目指すとしている。

勧告案は加盟国に対し、全ての教師や職業訓練所の講師などを対象にデジタル教育に必要な訓練を提供し、デジタル教育のコンテンツ、機器、インフラに十分な投資を実施すべきとしている。なお、新型コロナ禍からの経済支援策であるEU復興基金の中核政策「復興レジリエンス・ファシリティ(RRF)」では、各加盟国は既に合計約230億ユーロをデジタル教育対策に割り当てている。

デジタル教育の対象者に関しては、低学年向けの早期教育から高等教育における高度デジタル人材の育成、職業訓練、生涯学習まで、あらゆる年代において支援を提供すべきとした。2021~2027年のEU中期予算計画(MFF:多年度財政枠組み)においては、結束政策の一部として110億ユーロ以上をデジタルスキル支援に割り当てている。

域内共通「欧州デジタルスキル証明書」発行に向け、パイロット事業を開始へ

このほか欧州委は、EU全域で通用する「欧州デジタルスキル証明書」の提供に向けて、パイロット事業を開始すると発表した。欧州デジタルスキル証明書は、域内の職場や教育機関での利用を想定する。複数の加盟国において実施されるパイロット事業を通じて、欧州デジタルスキル証明書の実用性を検証した上で、2024年には発行を開始したい考えだ。

(注1)調査レポート「EUデジタル政策の最新概要PDFファイル(1.8MB)」(2021年10月)を参照。

(注2)調査レポート「復興基金と主要加盟国のデジタル政策PDFファイル(620KB)」(2023年3月)を参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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