テレワーク導入時に順守すべき労働安全規格を官報公示

(メキシコ)

メキシコ発

2023年06月19日

メキシコ労働社会保障省(STPS)は6月8日、メキシコ公式規格(NOM)「テレワークにおける安全および健康のための条件」(NOM-037-STPS-2023外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を連邦官報で公布した。同規格は、テレワークを行う職場で事故や疾病を防止し、安全で健康的な職場環境を促進するために、安全衛生条件(注)を定めるものだ。2021年にテレワークに関する規定が盛り込まれた連邦労働法に基づき(2021年1月13日記事参照)、NOMの草案を公開し(2022年7月26日記事参照)、パブリックコメントを反映した上で公布した。テレワークでの雇用主と労働者の義務、安全と健康の条件などを定めており、公布から180日後に発効するため、テレワークを認める企業は対応を迫られる。

今回のNOMで重要な点は、雇用主の義務として、テレワークポリシーや安全衛生条件に基づくチェックリスト(職場環境検証リスト)を作成し、雇用主が事前に労働者の許可を得て、テレワークを行う部屋やレンタルオフィスを直接訪問し、確認を行う、または、労働者が写真やビデオの証拠を含むチェックリストを雇用主に自己申告し、雇用主が安全衛生条件を確認する必要があることだ(添付資料5.4と5.5参照)。また、雇用主はテレワークを行う労働者に対し、人間工学に基づく椅子やテレワーク時に必要な機材などを支給し、安全衛生条件に基づく環境を整備することが義務づけられた(添付資料5.6)。テレワークポリシーやチェックリスト、推奨される人間工学に基づいた椅子などの要件については、同規格の別添に記載されている。なお、安全衛生条件を満たさない職場ではテレワークを実施できないとしている。

テレワークを認める企業にはさらなるコスト増に

グエラ・ゴメス法律事務所のアントニオ・グエラ・ゴメス社長は「このNOMはテレワークの規制に役立つと考えていたが、幾つかのグレーゾーンがあり、個人の家を全て監視することは非常に困難だ。この規制は会社に追加コストを課すことになるほか、家庭内での事故は業務上の事故と見なされるなどの問題も伴う」と述べた(「レフォルマ」紙6月12日)。各テレワーク場所の安全衛生条件の確認をするための管理コストだけでなく、テレワーク導入時に安全衛生条件に適した家具や機器を支給する必要があるため、テレワークを認める企業にとっては、さらなる負担がかかることになる。

(注)照明の明るさや温度、換気、騒音などに起因する「物理的要因」、人間工学に基づかない机や椅子、コンピュータ機器などに起因する「人間工学的要因」、プライバシーや労働時間、休息時間などに起因する「心理的要因」による職場の危険を回避するための条件(詳細は同規格の7に記載あり)。

(阿部眞弘)

(メキシコ)

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