テレワークに関して労働法を改正、雇用主と労働者の義務を設定

(メキシコ)

メキシコ発

2021年01月13日

メキシコ政府は1月11日付の連邦官報において、「新型コロナ禍」で採用が増えたテレワークに関する規定を盛り込む連邦労働法の改正を公布した。適用は翌12日から。同改正では、連邦労働法にテレワークの章(第XII BIS章、第330‐A~K条)を新設し、テレワークを「使用従属関係にある労働者が報酬を伴う活動を雇用主の事業所以外の場所で実施し、物理的な出勤を必要とせず、労働者と雇用主との間の連絡や指揮命令を主に情報通信技術(ICT)を用いて行う労働形態」と定義し、テレワークの要件、雇用主や労働者の義務などを定めている。

連邦労働法のテレワークの規定が適用される労働者は、就労時間の40%超をテレワーク形態で実施する労働者とされ、臨時、あるいは散発的にテレワークをする労働者は対象外となる。テレワーク形態で労働者を雇用する場合は、雇用契約書の中に添付資料の1.に記載された内容を盛り込む必要がある。事業所に労働組合が存在し、組合との間で労働協約を締結している場合、労働協約の中にテレワークの規定を盛り込む必要がある。また、雇用主はテレワークの労働者に対しても、結社の自由や団体交渉権を保障するため、Eメールなどの手段を通じて、労働協約更改などに関する情報を提供する手段を構築する。労働協約を締結していない事業所(組合がない事業所)の場合は、就業規則の中にテレワーク規定を盛り込み、労働者間の連携や連絡を促進するため手段を構築する。

必要な機材や経費を雇用主が負担

第330-E条は、テレワーク導入に際した雇用主の義務を規定しており、詳細は添付資料の2.を参照。重要なのは、雇用主がテレワークに必要な機材を労働者に支給し、テレワークのために必要となる通信費や追加の電気代も負担することだ。また、支給した機材の記録を作成し、管理する必要がある。第330-F条は、労働者の義務を定めており、支給された機材の保全や仕事で使用したデータの保護などが求められる。詳細は添付資料の3.を参照。

労働者を事業所における労働からテレワークに移行させる場合、不可抗力の事態を除き、労働者の意思を尊重しなければならない。また、事業所での労働への復帰の権利が保障される。雇用主は、同種の仕事に従事する事業所での労働者とテレワーク労働者を待遇面で差別してはならない。テレワーク労働者の活動を監督するメカニズムは、プライバシーの権利や個人情報保護を保障した上で導入されなければならない。カメラやマイクは、非常時、あるいは仕事の性質から必要な場合のみ、仕事の監督のために利用することができる。

労働社会保障省は、人間工学的要素、メンタルヘルス、その他のテレワークに伴うリスクを考慮した上で、本改正の施行後18カ月以内にテレワークに関する安全衛生基準をメキシコ公式規格(NOM)として作成する。労働査察官は、テレワークに関する査察の際、雇用主が労働者に対してテレワークに要する機器や資材を適切に支給し、記録しているかどうか、テレワーク労働者の給与が同種の労働に従事する事業所における労働者に対する給与よりも低く設定されていないか、などを確認・監視する。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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