閣僚レベルの対話再開も、米国の強硬な対中姿勢は変わらず、ジェトロの米中月例レポート(2023年5月)

(米国、中国)

米州課

2023年06月19日

ジェトロは6月16日、米国の対中国関連政策についてまとめた2023年5月分の月例レポートを公表した。このレポートは、日本企業が米中関係に関する米国の動向を把握できるよう、2021年7月から毎月分を作成して特集ページに連載している。

2023年5月の米中関係について、両国による閣僚レベルの会談が再開し、改善の兆しを見せた。5月11日にウィーンで行われたジェイク・サリバン大統領補佐官と王毅・共産党政治局員による会談は、2月の偵察気球問題以来、初めての閣僚級会談となった。同月開催されたAPECデトロイト貿易担当相会合の機会に、ジーナ・レモンド商務長官は25日、キャサリン・タイ通商代表部(USTR)代表は26日に王文濤・商務部長と会談した(2023年5月29日記事参照)。また、バイデン政権は今後の対中政策の基本方針について、「デカップリング(分断)」ではなく「デリスキング(リスク回避)」だと積極的に発信するようになった。同様のメッセージはG7広島サミットでも示され、G7諸国の中国に対する方針が明確化している。

他方、連邦議会では、中国に対する強硬な政策を含む追加的な法案が提出された。中でも、チャック・シューマー上院院内総務は、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に続く、第2弾の対中競争法の制定を推奨し、超党派議員に働きかけている(2023年5月8日記事参照)。

州レベルでも、中国の影響力に対抗するための法律が制定された。フロリダ州では5月8日、中国、ロシア、イランなど懸念国の事業体が州内の農地や不動産を取得・所有することを禁止または制限する法案が成立した。また、モンタナ州では17日、グレッグ・ジアンフォルテ知事(共和党)がTikTokの利用を禁止する法案に署名した(2023年5月24日記事参照)。ただし、州レベルで経済制裁を含む対外政策を実施するためには、連邦議会の授権が必要となるため、同法に関する今後の動向が注目される。

米国の対中政策・措置や米国側から見た米中関係の動向について、行政府、連邦議会、産業界、学会に分けて解説する月例レポートは、こちらの特集ページからさかのぼって閲覧が可能。米中関係に関する中国の動向も確認できる。

(谷本皓哉)

(米国、中国)

ビジネス短信 21faa9d32c125b96