米下院議長、債務上限の最大1.5兆ドル引き上げ含む歳出削減案を発表、バイデン政権は交渉拒否の構え

(米国)

ニューヨーク発

2023年04月21日

米国連邦議会下院で共和党トップを務めるケビン・マッカーシー議長(カリフォルニア州)をはじめとする下院共和党議員5人は4月19日、与野党間で懸案となっている債務上限引き上げ問題(2023年2月17日記事参照)について、債務上限を最大1兆5,000億ドル引き上げ、連邦政府の支出を4兆5,000億ドル削減する独自の法案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

発表された法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、連邦政府の2024会計年度(2023年10月~2024年9月)の社会保障や軍事関係支出などを除く裁量的支出を2022会計年度の水準に戻すとともに、その伸び率を今後10年間、毎年1%に縮小することが柱。これによって、インフレ削減法で盛り込まれたクリーンエネルギー生産設備などに対する税額控除支援策(2022年10月6日付地域・分析レポート参照)などは廃止されることとなる。また、法廷でその有効性が現在争われている学生ローン支払い免除・停止措置(2022年11月24日記事参照)を中止することも盛り込んだ。こうした支出削減措置の見返りとして、債務上限を現行の31兆4,000億ドルから最大1兆5,000億ドル引き上げるか、2024年3月末まで債務上限を凍結するという2つの基準を設定し、いずれかの基準に到達するまでは債務の発行を認める。法案は来週、下院での採決を目指すという(政治紙「ロール・コール」電子版4月19日)。

他方、民主党が多数派となっている上院で同法案が可決される可能性は低い。さらに、ジョー・バイデン大統領は今回の共和党案について「最も脆弱(ぜいじゃく)な人々を傷つける」ものとして厳しく批判し、支出に関する交渉は行わないとしている(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版4月19日)。

米国議会予算局(CBO)は2月、債務上限に関する対応がない場合、7月から9月にかけて債務不履行に陥る可能性があると指摘していたが、ゴールドマン・サックスによると、税収の減少により、債務不履行に陥る時期が6月になる可能性があるとの見通しを示している(ブルームバーグ4月19日)。市場では、国や企業のデフォルトに備える保険として取引される5年物の米国のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドが2011年ごろの水準にまで急上昇しており、タイムリミットが確実に近づく中で、本格的にデフォルトへの警戒を強めている状況だ。

(宮野慶太)

(米国)

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