米下院、共和党提出の債務上限引き上げに関する歳出削減法案を可決

(米国)

ニューヨーク発

2023年04月27日

米国下院議会は4月26日、連邦債務上限を最大1兆5,000億ドル引き上げ、連邦政府の支出を4兆5,000億ドル削減する法案を賛成217、反対215で可決した。

同法案は、与野党間で債務上限引き上げ問題が懸案となる中で(2023年2月17日記事参照)、下院共和党トップを務めるケビン・マッカーシー議長(カリフォルニア州)ら共和党議員5人が4月19日に独自の法案として発表したもの(2023年4月21日記事参照)。法案発表後も共和党内の調整が難航したため、党内一部の歳出削減強硬派の意見が取り入れられ、より厳しい歳出削減策が盛り込まれた。例えば、低所得の子ども世帯を対象とする支援の厳格化が前倒しとなっているほか、食糧支援プログラム(SNAP)で発生する未使用金を各州が貯蓄することを禁止する内容なども盛り込まれた(政治専門紙「ポリティコ」4月26日)。党内調整は26日未明まで続けられたにもかかわらず、投票では共和党から4人が反対に回るとともに、1人が棄権しており、下院共和党内の意思統一の難しさが露呈するかたちとなった。

法案は上院に送られる見込みだが、上院民主党トップのチャック・シューマー多数党院内総務(ニューヨーク州)は「上院に到着した直後に廃案になる」と述べており(ロイター4月26日)、民主党が多数派を占める上院で可決される見込みは相当低いのが現状だ。法案の下院通過を受けて、ホワイトハウスはカリーヌ・ジャンピエール報道官名の声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、「大統領はこの法案が成立する可能性はないと明言している」として、現状の法案については交渉を拒否するというジョー・バイデン大統領のスタンスをあらためて示している。

一方で、法案が下院を通過したことの政治的意味合いは大きく、同法案が上院で廃案や否決となった場合でも、膠着(こうちゃく)状態に陥っていた債務上限問題に関する与野党間の交渉が大きく動き出す可能性もある。債務不履行までのタイムリミットが確実に迫り、シリコンバレー銀行などの破綻による信用不安や、景気後退への懸念も高まる中、債務上限問題について与野党間で折り合いをつけられるか、注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

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