米USTR、医療品の対中追加関税の適用除外を9月末まで延長

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年05月15日

米国通商代表部(USTR)は5月12日、1974年通商法301条に基づいて中国原産の輸入品に課している追加関税(301条関税)について、適用除外対象となっている新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)対策用の医療関連製品の除外期限を延長すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

新型コロナ対策用の医療関連製品への301条関税について、USTRはもともと99品目を適用除外対象としていたが、そのうち18品目は2021年11月30日に期限が切れ、残りの81品目(注1)について過去数回にわたり延長を行ってきた。直近の延長は2023年2月に発表し、2023年5月15日までとしていた(2023年2月3日記事参照)。USTRは今回、81品目のうち77品目(注2)について9月30日まで、それ以外の4品目は5月31日まで除外の延長を認めるとしている。77品目に限って除外延長を9月末までに設定した点については、「77品目の除外延長は、国内でのそれら品目の製造に深刻な損害を与えないと判断した。また、9月末までの延長はUSTRに、適用除外を(301条関税の)4年ごとの見直しの結果と整合させるための時間を与える」と説明している。

USTRは2022年10月以降、301条関税全体の見直しに着手している。具体的な進展はないが、USTRの上記説明に基づくと、9月末前後には何らかの動きが出てくる可能性がある。キャサリン・タイUSTR代表は3月の議会公聴会で、見直しの状況について「中国が不公正な政策や慣行を続けていることを考慮し、われわれの経済的利益をどのように実現するかを慎重かつ戦略的に検討している」と説明している(2023年3月27日記事参照)。タイ代表は2022年11月に、中国の王文濤商務部長(商務相)とタイ・バンコクで会談を行って以降、同氏と接触していない(2022年11月21日記事参照)。その後、米中関係は中国の偵察気球問題(2023年2月6日記事参照)や、台湾の蔡英文総統の訪米(2023年4月11日記事参照)などを経て緊張が高まり、政府高官間の接触は事実上断絶していた。しかし、5月10~11日にはジェイク・サリバン大統領補佐官(安全保障)がオーストリア・ウィーンで王毅・共産党中央政治局委員と会談を行っており、報道によると、タイ代表も5月末にミシガン州デトロイトで開催されるAPEC貿易閣僚会合の機会に、王商務相との面会を計画しているとされる(ブルームバーグ5月9日)。今後、両国関係改善に向けた協議が深まるか注目される。

(注1)除外対象の81品目は、2021年11月16日付官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの付属書(Annex)Bで確認可能。

(注2)今回の官報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の付属書(Annex)Bで確認可能。

(磯部真一)

(米国、中国)

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