中国外交部、米ハドソン研究所とレーガン図書館に対抗措置の実施を決定
(中国、米国)
北京発
2023年04月11日
中国外交部は4月7日、米国のハドソン研究所とロナルド・レーガン大統領図書館およびその責任者に対して対抗措置を取る決定(以下、決定)を発表し、即日施行した。
決定は、「米国が中国の度重なる抗議や断固とした反対を顧みず、台湾地域の指導者である蔡英文が3月29~31日および4月4~6日に非公式に米国に立ち寄り政治活動を行うことを許した」と指摘し、「ハドソン研究所とロナルド・レーガン大統領図書館が、蔡英文が米国で行った『台湾独立』分裂活動のために舞台を提供し、便宜を図ったことは『1つの中国』の原則および中国と米国の3つの共同コミュニケ(注1)に違反するものであり、中国の主権と領土の一体性を損なうもの」とした。
その上で、反外国制裁法の第4条、第5条、第6条、第15条の規定に基づき、両組織とその責任者を「対抗リスト」に掲載した上で、これらの組織および個人に対してそれぞれ以下の対抗措置を取るとした(注2)。
(1)ハドソン研究所、ロナルド・レーガン大統領図書館に対する措置:
中国境内の大学、機関などの組織および個人との関連する取引、交流、協力などの活動を厳格に制限。
(2)ハドソン研究所評議員会議長であるサラ・メイ・スターン氏、同研究所のジョン・ウォルター所長、ロナルド・レーガン大統領財団・研究所のジョン・ハイブッシュ元専務理事、同財団・研究所最高管理責任者のジョアン・ドレイク氏に対する措置:
- 中国境内の動産、不動産およびその他の各種財産の凍結。
- 中国境内の組織、個人が当該個人と関連する取引、協力などを行うことを禁止。
- 当該個人に対してビザを発給せず、入境を許可しない。
ハドソン研究所は米国の保守系シンクタンクで、今回訪米した蔡英文氏に対してグローバルリーダーシップ賞を授与したと発表している。また、ロナルド・レーガン大統領図書館は、米国連邦議会下院のケビン・マッカーシー議長が4月5日に蔡氏と会談した際の会場となった(2023年4月7日記事参照)。
なお、中国共産党中央台湾工作弁公室(注3)は外交部の発表と同じ4月7日、台湾の蕭美琴氏に対して本人・家族の中国(香港、マカオを含む)入国や、関連企業による中国の組織や個人との協力を禁じた。また、国務院台湾事務弁公室(国台弁)は同日、台湾の「遠景基金会」と「アジア自由民主連盟」の2つの団体に対して懲戒措置を取るとともに、両団体の責任者の中国(同上)入国や中国の組織や個人による両団体との協力を禁止すると発表している(注4)。
(注1)1972年、1978年、1982年に発表された中国と米国間の3つのコミュニケを指す。
(注2)反外国制裁法は、外国からの制裁に対する中国の対抗措置について定めた法律で、2021年6月10日から施行されている。直近では、米国が2022年12月9日にいわゆる「チベットの人権」問題を口実に2人の中国当局者に制裁を行ったことに対して、同法第4条、第5条、第6条の規定に基づき、米国の2人の個人を「対抗制裁リスト」に掲載し、対抗措置を取った(2022年12月28日記事参照)。同法の内容についてはジェトロによる解説「反外国制裁法の概要(573KB)」を参照。
(注3)国台弁は国務院(政府)、中国共産党中央台湾工作弁公室は党の組織として台湾関連の業務を主管するとされているが、制度上は「1つの組織に2つの看板」をつけたもので、組織トップの主任も同一人物が務めている。
(注4)国台弁は両団体に対する措置の理由を、「『民進党当局』の指図の下で、『民主』『自由』『協力』を口実に、『学術交流』や『研究』を名目として国際社会で『台湾独立』思想を売り込み、反中勢力を引き込み、『1つの中国』の原則に違反する事件を起こし、台湾のいわゆる『国際空間』を拡大させようとしている」ためとしている。
(小宮昇平)
(中国、米国)
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