米USTR代表が公聴会で証言、通商交渉で議会の関与求める議員の声相次ぐ

(米国)

ニューヨーク発

2023年03月27日

米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は3月23~24日、議会上下各院の公聴会で、バイデン政権の2023年の通商政策課題(2023年3月2日記事参照)について証言を行った。公聴会は、議会で通商を所管する上院財政委員会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます下院歳入委員会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでそれぞれ開かれた。

タイ代表は証言の中で、バイデン政権が労働者を最優先し今日の喫緊の課題に対処することで「貿易に関して新しい物語を書いている」と述べた。具体的には、貿易に公平性を取り戻すとして、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の執行や、グローバルサプライチェーンからの強制労働の根絶に向けた日本やEUとの協力を挙げた。米国の輸出事業者にとっての新たな市場機会の追求では、インド太平洋経済枠組み(IPEF)が2023年の最優先課題になると言明した(2023年3月22日記事参照)。米中関係については、1974年通商法301条に基づく対中追加関税の見直し(2022年10月13日記事参照)で「中国が不公正な政策や慣行を続けていることを考慮し、われわれの経済的利益をどのように実現するかを慎重かつ戦略的に検討している」と言及した。

出席した議員からは、バイデン政権が進める多国間の経済枠組みについて、交渉過程における透明性の欠如や、議会の関与の必要性を指摘する声が相次いだ。ロン・ワイデン上院財政委員長(民主党、オレゴン州)は、政権が通商政策で「単独行動」を取り始めているとの懸念を表明し、合衆国憲法上、外国との通商を規制する権限を持つのは連邦議会だと訴えた(2022年12月22日記事参照)。下院歳入委員長に新たに就任したジェイソン・スミス議員(共和党、ミズーリ州)も、議会を迂回する「貿易枠組み」は息の長い協定にはならないと政権の姿勢を批判した。

こうした要請を念頭に、タイ代表は証言の中で「議会は貿易に関する憲法上のパートナーだ」と語った。また、2022年の公聴会以降、USTRは議会に対し380回を超えるブリーフィングを行い、そのうち80回以上がIPEFに関するものだったと強調した。USTRは2023年3月21日、交渉の透明性を高める取り組みの一環として、IPEFの貿易分野のうち、第1回交渉官会合に先立って参加国に共有した農業、サービス分野の国内規制、税関・貿易円滑化、良き規制慣行の交渉テキストの概要を公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)している。

民主、共和両党の一部議員は、バイデン政権がこれまで避けている関税削減・撤廃を含む従来型の貿易協定の締結を促した。上院財政委員会のマイク・クレイポー少数党筆頭理事(共和党、アイダホ州)は公聴会の冒頭、米国、中国、EU製品の対ベトナム輸出にかかる関税率を示した図を取り上げ、同国と貿易協定を結ぶ中国およびEUに比べ、貿易協定を持たない米国の農産品や自動車の競争力が低下していると指摘した。政権が取り組む経済枠組みで今後、市場アクセスを扱うかとのチャック・グラスリー上院議員(共和党、アイオワ州)の問いに対して、タイ代表は従来型の貿易協定を否定しない一方、「われわれの通商政策は(パートナー国との)関係性のニーズと経済のニーズに合わせる」必要があると答えた。

(甲斐野裕之)

(米国)

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