EU理事会、エコデザイン規則案で合意、未使用繊維製品の廃棄禁止を目指す

(EU)

ブリュッセル発

2023年05月24日

EU理事会(閣僚理事会)は5月22日、製品仕様における持続可能性要件の枠組みを設定するエコデザイン規則案に関して、EU理事会としての立場で合意したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。企業に対し、売れ残るなどして未使用の繊維製品の廃棄禁止を明文化するなどの内容。

規則案は「循環型経済行動計画」(2020年6月4日付地域・分析レポート参照)に基づく政策パッケージ第1弾として、欧州委が2022年3月に提案(2022年4月4日記事参照)。現行のエコデザイン指令で一部の製品グループに限定されている適用対象を食品や医薬品を除くあらゆる製品に拡大した上で、エネルギー効率性のほか、再利用、修理、リサイクルなどの可能性や耐久性など、製品ごとの基本要件(エコデザイン要件)を設定するための枠組みを規定する。

規則案には各製品のエコデザイン要件の規定はなく、具体的な要件は欧州委が別途、規則案の施行後に委任法令として策定する。各製品のエコデザイン要件は「修理する権利」指令案(2023年3月27日記事参照)や包装・包装廃棄物規則案(2022年12月2日記事参照)などの適用の基礎にもなる。また、規則案はエコデザイン要件などの製品情報を「デジタル製品パスポート」を通じて消費者に提供することも義務付ける。

未使用繊維製品の廃棄禁止を明文化

EU理事会の立場で最も注目されるのは、未使用繊維製品などの廃棄禁止だ。EU理事会の立場によると、未使用繊維製品の廃棄は規則案の施行3年後から禁止する。小規模企業は廃棄禁止規定の適用から除外するほか、中規模企業には廃棄禁止規定の適用開始後1年間の猶予期間を与える。また、委任法令により未使用品の廃棄禁止を可能にする一般的な条項も含まれていることから、将来的には繊維製品以外の製品についても、未使用品の廃棄を禁止することが予想される。

欧州委はこれまでも、繊維製品を中心に未使用品の廃棄禁止の方向性は示していたものの(2022年4月4日記事参照)、当初の提案では、廃棄に関する透明性要件や廃棄禁止を可能にする委任法令条項を設けるにとどめており、具体的な廃棄禁止については、影響評価などを実施した上で検討するとしていた。現地報道では、フランスやドイツが繊維製品などに限定した未使用品の廃棄禁止を求め、繊維業界を抱えるイタリアなどの反対を押し切ったとしている。

このほか、EU理事会の立場には、欧州委が主導する製品ごとのエコデザイン要件に関する委任法令の策定で加盟国の関与を強化するための「エコデザイン専門家グループ」設置や、エコデザイン要件を規定する委任法令の適用開始時期に関して施行後18カ月の移行期間の設定、環境影響に関する個別法が存在する自動車の規則案の適用対象からの除外などに関する条項も含まれている。

なお、規則案は今後、欧州議会の立場の採択後に、最終的な合意形成に向けてEU理事会と欧州議会による交渉を経る必要があり、内容は修正される可能性がある。

(吉沼啓介)

(EU)

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