欧州委、製造事業者に製品の修理を義務付け、消費者の「修理する権利」法案を発表

(EU)

ブリュッセル発

2023年03月27日

欧州委員会は316日、「循環型経済行動計画」(2020年6月4日付地域・分析レポート参照)に基づく政策パッケージ第3弾(注1)の一環として、製品の修理を推進するための共通ルールに関する指令案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。現状では、製品の修理を受ける上でハードルが高いことから、消費者は製品が故障した場合に、修理よりも廃棄や買い替えを選ぶ傾向が強い。そこで指令案は、消費者の新たな権利として「修理する権利」を導入し、製品の製造事業者に対して、法定保証の対象か否かにかかわらず、一定の条件で修理を義務付ける。また、消費者の修理サービスへのアクセスを容易にするとともに、修理事業者への部品や必要情報の提供を製造事業者に義務付けるなど、修理サービスの拡大を促進することで、修理をベースにした新たなビジネスモデルの構築を目指す。指令案は今後、EU理事会(閣僚理事会)および欧州議会で審議される。

指令案はまず物品販売指令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを改正し、保証対象となる製品不良が発生した場合に、修理費用が交換費用と同等あるいは下回る限り、販売事業者に対して、製品の交換ではなく、無償の修理を義務付ける。

また、指令案では、製品不良が法定保証の対象外となる場合でも、消費者の要請に応じて修理サービスを提供することを製品の製造事業者に義務付ける。ただし、製造事業者は、別の事業者との下請け契約に基づいて修理サービスを提供することが認められる。製造事業者がEU域外で設立された事業者の場合には域内の認定代理人が、認定代理人がいない場合には輸入事業者が、輸入事業者がいない場合には卸売業者が、それぞれ製造事業者の義務を負うことになる。修理義務化の対象となる製品はEU法で修理可能性要件が規定されている製品で、欧州委はエコデザイン指令の対象製品を主に想定している。現行のエコデザイン指令の対象(注2)は家庭用冷蔵庫やテレビなど31の製品グループに限定されているが、欧州委はエコデザイン指令の改正案(2022年4月4日記事参照)で、食品・飼料・医薬品などを除く幅広い製品に対象を広げることを提案していることから、修理義務化の対象となる製品も今後拡大することが予想される。このほか、製造事業者は修理サービスに関する情報を明確かつわかりやすい方法で消費者に提供することや、より多くの修理事業者によるサービス提供を可能にすべく、修理に必要な情報や部品を製造事業者から独立した修理事業者にも提供することが求められる。

さらに、消費者の修理サービスへのアクセスを容易にすべく、修理事業者を検索するオンラインプラットフォームを設置することを加盟国に義務付ける。また、消費者が修理サービスを受けやすくするために、修理価格、修理に必要な所要時間、運搬や取り付けなどの付随サービスの有無などの条件を明記した「欧州修理情報フォーム」を消費者に事前に提示することを修理事業者に求める。修理事業者は同フォーム発行後30日間、同フォームに明記した条件を原則として変更することはできない。

(注1)政策パッケージ第1弾・第2弾は調査レポート「EUの循環型経済政策」を参照

(注2)ジェトロのEU制度情報「EU 輸入管理その他 CEマーク詳細PDFファイル(359KB)」を参照

(吉沼啓介)

(EU)

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