貿易に関する支援措置発表、域外による貿易制限措置への対応や人民元決済を推進

(中国)

北京発

2023年05月10日

中国国務院弁公庁は4月25日、「貿易の規模の安定化と構造の最適化の推進に関する意見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(以下、意見)」を公布した。意見では、(1)貿易による市場開拓、(2)重点品目の輸出入の規模の維持・拡大、(3)財政・金融面の支援強化、(4)貿易の革新発展、(5)貿易の発展環境の最適化、の5つの面から貿易に対する支援措置を打ち出した。

(1)については、国内の重点航空ハブとなっている空港を中心に中国および外国の航空会社による国際旅客便の増便や復便を加速するとした(注1)。(2)については、空運による自動車の輸出を支援するほか、国内における短期的な不足を補うため、「輸入を奨励する技術・製品リスト」を改定して先進的な技術・設備の輸入拡大を図るとした。(3)では、貿易における人民元決済の規模を拡大するとした(注2)。(4)では、中小零細規模の輸出入企業に対して総合的なデジタル化のソリューションを提供するサプライヤーを育成するほか、業界団体などに輸出製品のグリーン低炭素標準を策定するよう指導するとした。

(5)では、域外の貿易制限措置への対応や自由貿易協定(FTA)の一段の活用を打ち出した。地方政府や輸出入企業への研修や指導の強化を通じて域外の不合理な貿易制限措置による影響を受けた重点企業を救済し、行政の各レベルにおける貿易摩擦やアラート対応部門のサービス能力を高めて企業が不合理な貿易制限措置に積極的に対応することを支援するほか、貿易促進機関にリスクの評価や特定を実施させるとした(注3)。また、FTAについては、重点業種ごとに利用ガイドラインを作成し、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定などをテーマにした研修をさらに実施し、フォーラムの開催などを通じて各地域および企業の経験をシェアするほか、FTAの利用率を絶えず引き上げるとした(注4)。

中国海関総署が4月13日に発表した2023年第1四半期の貿易統計によると、同期の中国の輸出の伸びは全体では前年同期比プラスだったものの、EU、米国、日本向けの輸出が軒並みマイナスとなっており、海関総署も、外需の不振や地政学上の問題のために2023年の中国の貿易の見通しは依然として厳しく、貿易が経済を下支えする役割を発揮するには引き続き努力が必要との認識を示している(2023年4月19日記事参照)。今後、今回の意見で示された内容がどのように具体化されるか注目される。

(注1)意見では、貿易による市場開拓の強化に向け、国際旅客便の増便や復便を通じて域外からのビジネスパーソンの往来を円滑化させることを支援措置の一例として挙げている。具体例としては、世界中からバイヤーが買い付けに来る際の往来や、中国国内外の展示会への出展や買い付けを行う際の往来の円滑化などを想定している。

(注2)商務部の発表によると、2022年の中国の貿易の人民元決済金額は前年比37.3%増の7兆9,200億元(約158兆4,000億円、1元=約20円)で、貿易総額に占める人民元決済のシェアは前年比2.2ポイント上昇して19%となった。

(注3)商務部は4月12日、農産品や化学工業製品、繊維製品などの業界団体の申請を受け、台湾の中国に対する貿易制限措置について調査を開始すると発表している(2023年4月13日記事参照)。

(注4)商務部の発表によると、中国は26の国・地域と19の自由貿易協定を結んでいるほか、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)とDEPA(デジタル経済パートナーシップ協定)への加入を申請している。商務部は、CPTPPについて、加入に伴うコストと便益を評価する作業を行ったほか、一部の自由貿易試験区や自由貿易港において同協定の内容をベンチマークしたトライアルを実施していることなどを挙げて、中国には同協定の義務を履行する能力があると表明した。また、DEPAについては、2023年3月に中国の加入に関するワーキンググループの第1回会合が開催され、同協定の加盟国と貿易のペーパーレス化や国内の電子商取引の枠組み、物流、領収書の電子化、電子決済などのテーマについて交流したと明らかにした。

(小宮昇平)

(中国)

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