中国商務部、台湾に対する貿易障壁調査開始を決定

(中国、台湾)

北京発

2023年04月13日

中国商務部は4月12日、業界団体の申請を受け、「対外貿易法」第36条、第37条と「対外貿易障壁調査規則」第12条の規定に基づき、台湾の中国に対する貿易制限措置について貿易障壁調査を行うとする公告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

公告によると、調査は同日から10月12日までの期間に実施され、特別な事情がある場合は2024年1月12日まで延長できる。調査対象となるのは、台湾が制定し現在実施している中国産品に対する輸入禁止関連措置で、農産品や化学工業製品、繊維製品などの2,455品目など(注1)となっている。調査はアンケートや現地調査(注2)などの方法によって行うとしている。

「貿易障壁」の定義については、「対外貿易障壁調査規則」第3条で、ある国・地域政府が実施または支援している措置や慣行に以下のいずれかの状況が存在する場合、「貿易障壁」と見なすとしている。

(1)当該国・地域と中国が締結した、または参加している経済貿易条約または協定に違反している、あるいはその経済貿易条約または協定に定められた義務を履行していない。

(2)次のいずれかの貿易上の悪影響を及ぼすこと:

(a)当該国・地域の市場または第三国・地域の市場への中国の製品・サービスの参入を妨害・制限する、またはその恐れがあること。

(b)当該国・地域の市場または第三国・地域の市場で中国の製品・サービスの競争力を損なう、またはその恐れがあること。

(c)当該国・地域または第三国・地域から中国への製品・サービスの輸出を妨害・制限する、またはその恐れがあること。

また、同規則第33条では、貿易障壁調査の対象となる措置や慣行が同規則第3条に定義する「貿易障壁」に該当すると認定した場合、商務部は状況に応じて2者協議の実施やマルチの紛争解決メカニズムの開始、その他適当な措置を取ることができるとしている。

中国と台湾の両岸経済関係については、中国が2021年以降、防疫などを理由として台湾産品に対する輸入制限・停止措置を相次いで打ち出した(注3)ほか、一部の台湾食品企業の登録情報が不備としてこれらの企業からの輸入を一時停止するなどの問題があったが、最近では国務院台湾事務弁公室が登録情報の不備を解消した一部の台湾食品企業からの輸入を再開したことを明らかにした(2023年2月15日記事参照)ほか、3月15日には台湾産タチウオと冷凍アジの輸入を同日から再開すると海関総署が決定したと同弁公室が発表するなど、緩和の動きも見えていた。

(注1)商務部公告では、申請者の業界団体が申請したものが2,455品目としている。また、国務院台湾事務弁公室も4月12日、「台湾当局」が長期にわたって中国の2,400余りの品目の輸入に対して一方的な制限措置を取り、中国の関連産業や企業の利益に損害を与えてきたとの認識を示した。

(注2)「対外貿易障壁調査規則」では、商務部が必要と認めた場合、国務院関連部門や専門家などで構成する諮問グループを設置し、貿易障壁調査での技術的・法律的問題に関する意見を聴取できる(第20条)ほか、商務部が必要と認め、調査対象国・地域政府の同意を得た場合、当該国・地域に職員を派遣して調査を実施し証拠を収集することができる(第22条)としている。

(注3)中国は2021年3月1日から台湾産パイナップルの輸入を有害生物の検出を理由に一時停止したほか、同年9月20日から台湾産果物のバンレイシ(釈迦頭)とレンブ(蓮霧)、2022年6月13日から台湾産高級魚のハタの輸入を一時停止した。また、2022年8月3日からは台湾産かんきつ類、タチウオ、冷凍アジの輸入を一時停止していた。

(小宮昇平)

(中国、台湾)

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