米USTRのタイ代表、東京都内のパタゴニア店舗を視察、人権重視を強調

(米国、日本、中国)

米州課

2023年04月20日

訪日中の米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は419日、米国アウトドア製品大手パタゴニアの東京都渋谷区内の店舗を訪問し、グローバルサプライチェーンからの強制労働の排除に関する記者会見を行った。

タイ代表は会見の冒頭、米国の「労働者中心の通商政策」(2023年3月2日記事参照)について触れ、その目的について「貿易は良いことのために実施されるべきだと信じている」「世界中の労働基準を引き上げ、より多くの人々の生活を向上させたい」と説明した。具体的には、サプライチェーンのあらゆる段階において強制労働問題に対処しなくてはならないと述べ、「日本はこの闘いにおけるかけがえのないパートナーだ」と強調した。その日本との関係について、タイ代表は、日米両国が過去数年間にわたってサプライチェーンと人権に関する議論を続けてきたと説明し、「それら議論で生まれたアイデアを実行に移すために日米両政府はタスクフォースを立ち上げた」と述べ、日米両政府が20231月に設立することで合意した「サプライチェーンにおける人権及び国際労働基準の促進に関するタスクフォース」(2023年1月10日記事参照)の設立経緯を説明した。同時に、パタゴニアを例に挙げつつ、人権に関する取り組みを実施していくにあたっては、関連する産業界との協力が不可欠だと説明した。

タイ代表は、ジェトロから同タスクフォースの今後の展望について問われたのに対し、「今回の訪日で、日本政府が貿易における人権デューディリジェンス要件(2022年9月16日記事参照)を策定したことなど、人権の観点で前進していることを目にした」と評価した上で、「5月に日米両国のチームが集まり、どのような共同作業を行うか詳細を詰めていくことになると思う」と述べた。また、「タスクフォースやインド太平洋経済枠組み(IPEF)などは、日米両国が協力して世界のリーダシップを取る一例だ」とその成果を強調した。

続いて、パタゴニアのマーティ・ポンフレー日本支社長が、フェアトレード認証製品を中心とした同社のサプライチェーンにおける人権保護の取り組みを説明した。ポンフレー日本支社長は「パタゴニアは責任ある企業であろうと努めており、それには製品の品質へのこだわりだけではなく、製品を支える労働者がフェアな待遇を受けられるようにすることも含まれている」と述べた。

写真 左:USTR・タイ代表、右:パタゴニア・ポンフレー日本支社長(ジェトロ撮影)

左:USTR・タイ代表、右:パタゴニア・ポンフレー日本支社長(ジェトロ撮影)

タイ代表は会見後にパタゴニアの店舗を視察し、ポンフレー日本支社長らから製品や同社の人権デューディリジェンスの取り組みについて説明を受けた。なお、タイ代表の日本での滞在期間は41820日で、その間に西村康稔経済産業相、林芳正外相、ラーム・エマニュエル駐日米国大使らと面談を行う予定だ。

写真 パタゴニアの店舗を視察するUSTR・タイ代表(ジェトロ撮影)

パタゴニアの店舗を視察するUSTR・タイ代表(ジェトロ撮影)

なお、米国では2022年6月から中国・新疆ウイグル自治区が関与する製品について、強制労働に依拠して生産されているとの推定の下、米国への輸入を原則禁止するウイグル強制労働防止法(UFLPA)を施行している。同法では、ポリシリコンやトマトのほか、アパレル製品やその原料となる綿(コットン)が重点執行対象分野に掲げられている。米国税関・国境警備局(CBP)が3月に公開したUFLPA執行データ(2023年3月17日記事参照)によると、2022年6月の施行から2023年3月までにアパレル関連貨物678件(3,047万ドル)が同法執行対象となっており、厳格な水際措置が講じられているもようだ。

(葛西泰介)

(米国、日本、中国)

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