日米政府、サプライチェーンの人権促進に関するタスクフォース設置

(米国、日本)

ニューヨーク発

2023年01月10日

訪米中の西村康稔経済産業相とキャサリン・タイ米国通商代表部(USTR)代表は1月6日、「サプライチェーンにおける人権及び国際労働基準の促進に関するタスクフォース」を設置するための協力覚書(日本語PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)英語PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))に署名した。タスクフォースは、通商分野の日米共通のグローバルアジェンダなどに関して議論を行う日米通商協力枠組み(2022年8月26日記事参照)の下に置く。日本側は経済産業省と外務省など、米国側はUSTRと国務、商務、保健福祉、労働、国土安全保障の各省などがそれぞれ参加する。経済産業省とUSTRが共同議長を務め、原則年に2回開催する。

日米政府は、企業によるサプライチェーン上の人権尊重や国際的に認められた労働者の権利の保護などの促進を目的に、タスクフォースを通じて、両国の関連法令や政策、ガイダンス、執行実務などについて情報共有を行う。これには、サプライチェーンでの強制労働の撤廃に関わる取り組みも含まれる。また、両国は企業や労働者団体などの利害関係者との対話を円滑化し、人権と国際的に認められた労働者の権利に関するデューディリジェンスのためのベストプラクティスを促進する。利害関係者との対話では、両国の貿易政策と規制が労働者と企業に与える影響などに関し意見を聴取する方針だ。USTRはプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、これらの協力分野は企業が強靭(きょうじん)で持続可能なサプライチェーンに貢献することを目指し、予見可能性と明確性を高めることを目的としていると指摘している。経済産業省もニュースリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で、企業の予見可能性を高め、企業が積極的に人権尊重に取り組める環境の整備に向けて、国際協調を一層加速させていくと記した。

タイUSTR代表はプレスリリースで、日本政府が2022年9月に策定した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(2022年9月16日記事参照)などに触れ、「日本政府は労働者の権利を促進するための闘いで、一貫して信頼できるパートナーだ」と言及した。協力覚書の署名に際したコメント外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでも「過去1年間、米日通商協力枠組みの下で両政府は強制労働と闘うためにどのように協力し、デューディリジェンス基準に関し協調できるかについて優先的に議論してきた」と述べ、同枠組みの具体的成果としてのタスクフォースの意義を強調した。西村経済産業相も1月5日に首都ワシントンで講演した際、日米政府がこれまで「ビジネスと人権」の分野で絶え間なく議論を進めてきたと話し、同分野で日米協力を進展させる意向を示していた(2023年1月6日記事参照)。

西村経済産業相とタイ代表は協力覚書の署名後に会談を行った。USTRの発表によると、両閣僚はタスクフォースの第1回会合の時期を含む今後の予定について協議した。また、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の交渉の最新状況を確認し、今後の野心的な交渉スケジュールへの支持を表明した。

(甲斐野裕之)

(米国、日本)

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