2026年に「超高齢社会」入りへ、国家として対応を総括

(シンガポール)

シンガポール発

2023年04月26日

シンガポールのオン・イエクン保健相は4月20日の国会演説で、人口高齢化に向けた国家としての包括的な対応策を説明した。同国では2017年に65歳以上の高齢者が人口の14%を超え、政府の予測では、2026年に同割合が人口の21%に達する「超高齢社会」入りする見通しだ。

オン保健相は人口高齢化が与えている差し迫った課題として、国内労働力への影響を挙げた。同国の外国人永住権者(PR)を含む国民の労働力人口は2002年から2012年までに30%増加した。しかし、2012年から2022年までの増加幅は15%に縮小した。ただ、同保健相は労働力の増加を維持できた理由として、国民(PRを含む)の65歳以上の高齢者の雇用率が現時点(2023年4月)で約32%となり、過去20年で約3倍に増加したことを指摘。また、退職と再雇用の年齢を段階的に引き上げたことも理由に挙げた。同国の定年は現行63歳で、再雇用の年齢の上限が68歳。人材省は2030年までに定年を65歳、再雇用の年齢上限を70歳に引き上げる方針だ(2019年8月22日記事参照)。

同相は住環境の整備について、都市国家で地方のない同国では日本のような過疎化の問題に直面しないと指摘した。また、公団住宅を開発する住宅開発庁(HDB)が高齢化に対応した住宅計画で中心的な役割を果たす利点があると述べた。同国では国民の約8割が公団住宅(HDBフラット)に居住する。HDBは都心部から車で20分ほどの場所に位置する公団住宅地区「クイーンズタウン」を「健康地区(注)」に指定し、高齢者に配慮した住環境の整備、医療サービスや体操などのコミュニティサービスを提供している。同相によると、クイーンズタウンの住民の20%以上が2~3年前の時点で65歳以上の高齢者。同相は、同地区内に新たなHDBフラットを建設するなど、若い世代の住人を増やし世代間の交流ができるよう計画していると説明した。

さらに、高齢化への医療対応について、保健省は2023年7月から、中高年の国民を対象に予防医療イニシアチブ「健康促進SG(Healthier SG)」を開始する(2023年3月10日記事参照)。同相は「家庭医や地域の診療所などプライマリケアー(一次医療)が、(同国の)医療の基盤になる」と述べた。

(注)クイーンズタウンの健康地区(Health District@Queenstown)の詳細はHDBのサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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