ルーラ大統領が訪中、電力通信・EV・建設企業を訪問、BNDESは最大13億ドルを資金調達へ

(ブラジル、中国)

サンパウロ発

2023年04月17日

ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は4月12~15日に中国を公式訪問した。中国は輸出入ともにブラジルの最大の貿易相手国だ。ルーラ大統領は1月の大統領就任後、当初は3月に訪中を予定していたが、自身の体調不良のため延期していた。今回の公式訪問では、ブラジルとビジネスの結びつきが強い中国企業を訪問し、北京で習近平国家主席と会談を行った。

ブラジル大統領府公式サイトによると、ルーラ大統領は13日、ブラジル北東部バイーア州に所在する米国フォードの工場跡地の購入を検討している中国の電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)を訪問したほか(2023年1月17日記事参照)、華為技術(ファーウェイ)の研究開発センターも訪問した。ファーウェイでは、コネクティビティーやデジタルインクルージョン、教育、健康、再工業化に注目したパートナーシップで、ブラジル市場を長期視点で捉えていると説明した(大統領府公式サイト)。また、バイーア州都サルバドール市と同市近郊のイタパリカ島を結ぶ橋の建設プロジェクト(注1)を有する中国交通建設(CCCC)も訪問した。

14日には、ブラジル国内14州で送電線ビジネスに関わる中国国営の送電最大手の国家電網(SGCC)を訪問し、ルーラ大統領は「中国の投資はブラジルの風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギー発電計画を既存の送電ネットワークと統合し、拡大して行く上で重要だ」と強調した。

同日の習国家主席との会談では、「両国関係を貿易面にとどまらず、深化させていく」と述べており、両国省庁間などで15の覚書など外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名した。具体的には、貿易円滑化や情報通信技術の協力、投資促進や産業協力といった内容に加え、衛星(CBERS-6)の共同開発に関するもの(注2)や、両国の共同テレビ番組制作に関する内容も含まれた。

同日付の国立経済社会開発銀行(BNDES)公式サイトによると、BNDESは中国国家開発銀行(CDB)から最大13億ドル(長期融資8億ドル、短期融資5億ドル)の調達に向けた協定を締結し、エネルギー転換や、都市モビリティー、インフラなどの戦略的なセクター向けの投資を加速させるために、CDBと資金調達で協力していくと説明している(注3)。

15日付の現地紙「フォーリャ・デ・サンパウロ」によると、ブラジル財務省の推計として、ルーラ大統領の訪中に伴い、中国から500億レアル(約1兆3,500億円、1レアル=約27円)規模の投資を生み出す可能性があるという。

また、14日付で発表した両国の共同声明では、南米統合への努力を見据えたブラジルの開発政策や投資計画と、中国の「一帯一路」構想を含めた国際的なイニシアチブの相乗効果を調査することへの関心を示した。ただ、12日付現地紙「フォーリャ・デ・サンパウロ」は、「一帯一路」構想について、一部ブラジル政府内で対米関係への懸念や、学識者の間では実質的な中国からの投資に結びつくのかなどといったさまざまな考え方があるとしている。

(注1)イタパリカ島はバイーア州の避暑地で、州都サルバドール市から西方に位置。州内陸からサルバドール市への交通インフラを改善するとともに、大都市集中を緩和し、内陸部の自治体の発展などを視野に、同州経済にインパクトを与えるプロジェクトとされている。

(注2)ブラジルは既に、中国とブラジルが共同運用する衛星(CBERS-4、CBERS-4A)を有している(2021年3月8日記事参照)。CBERS-6では、雲があってもアマゾン熱帯雨林などのモニタリングができる技術があるという。

(注3)BNDESは、ブラジルで長期事業資金の供与を担う唯一の政府系金融機関。長期融資(10年)ではインフラ、エネルギー、製造業、石油・ガス、農業、鉱業、衛生、ESG(環境・社会・ガバナンス)、気候変動とグリーン開発、伝染病の予防、デジタル経済、高度なテクノロジー、自治体の管理など。短期融資(3年)では中国・ブラジル間の貿易などをはじめ幅広い用途を想定しているという。

(古木勇生)

(ブラジル、中国)

ビジネス短信 aeb14b61d239a242