ブラジル独自開発の衛星打ち上げに成功、自律的な地球観測が可能に

(ブラジル、インド)

サンパウロ発

2021年03月08日

ブラジル政府は2月28日、地球観測衛星「アマゾニア-1」を、インド南部のシュリーハリコータ砂州からの打ち上げに成功したことを発表した。打ち上げは、発射環境や条件が整ったインドの協力を得て行われた。

同プロジェクトは、科学技術革新省が国立宇宙研究院(INPE)やブラジル宇宙機関(AEB)と協力して実現したもの。「アマゾニア-1」は、ブラジルが単独開発した初の衛星。同衛星により、アマゾン地域や沿岸地域、貯水池の監視、農業分野への応用、災害対策などを目的とした画像データの取得、リモートセンシング(注)が可能となる。

ブラジルは既に、中国とブラジルが共同運用する衛星(CBERS-4およびCBERS-4A)を有しており、これらの衛星が取得する画像と併せることで、より精度の高い観測が可能になるという。例えば、CBERS-4やCBERS-4Aが特定地域の画像を取得したいタイミングで雲が障害となった場合、「アマゾニア-1」は異なるタイミングで同地域を通過して画像を取得することができる。また、「アマゾニア-1」の利点は、ブラジルが自律的に運用できる点だ。ブラジル航空宇宙工業協会(AIAB)のジュリオ・シダラ会長は2月27日、ユーチューブで配信された「アマゾニア-1の打ち上げ」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますというウェブイベントにおいて、「インターネット、銀行、クレジットカード、eコマース、携帯電話、衛星放送、航空機など日常生活に関わるサービスの中でも、直接的または間接的に衛星に依存しているものがある。戦略的観点と国家主権の観点から、完全に他国の宇宙システムに依存していることは望ましくない」とのメッセージを寄せている。

科学技術革新省の2月28日付プレスリリースによると、衛星の発射地であるインドを訪問したマルコス・ポンテス科学技術革新相は「同衛星の打ち上げは、アマゾンや他の地域を監視するための基礎となり、ブラジルの衛星分野の新時代を築いたことにもなる」と述べており、衛星技術の進歩に自信をみせた。

なお、ジャイール・ボルソナーロ大統領による2020年1月の訪印では、「伯・印戦略的パートナーシップ強化に向けた行動計画」が締結されており、その中で宇宙分野の協力について触れられていた。そのため、今回の衛星打ち上げは同計画の一部を実現したことになり、両国関係強化の一助にもなるとみられる。

(注)リモートセンシングとは、「物を触らずに調べる」技術のこと。人工衛星に専用の測定器(センサ)を載せ、地球を調べる(観測する)ことを衛星リモートセンシングという。

(古木勇生)

(ブラジル、インド)

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