中国BYD、新EV工場建設に向けEV用モーター、制御回路生産を検討

(ブラジル、中国)

米州課

2023年01月17日

ブラジル南部のパラナ州政府によると、中国の電気自動車(EV)メーカー大手である比亜迪(BYD)のタイラー・リー・ブラジル事業代表は1月10日、同州内にEV用モーターと制御回路の工場設置可能性につき、検討を行い、2023年3月に結論を出す意向を表明したという。これはダルシ・ピアナ副知事との協議で表明されたもので、同工場で生産されるモーターは、BYDが新たに建設を検討するEV工場に供給するとしている。

今回の発端は、BYD担当者が最初にパラナ州を訪問した際に、ステランティス・グループのフィアット・エンジン工場に関心を示したことに始まる。同工場は州都クリチバ大都市圏カンポ・ラルゴ市に所在し、2022年11月に生産を停止していた。タイラー・リー代表は「エンジン工場の情報を受け取り、2023年2月に中国から技術チームを同工場に派遣し、生産の可能性を評価し、同年3月にフィードバックを行う」と述べている。

ピアナ副知事は「われわれは州内での工場設置が正式になるよう交渉を続ける」と意欲を示した。同副知事は「メルコスールの中心に位置するパラナ州は、BYDのような企業に対して南米大陸のロジスティックセンターに変貌させる可能性がある」と強調している。

BYD、公共バスから乗用車・トラックの生産・販売にも着手

今回の発表では、BYDが新たに建設するEV工場の建設予定地、生産車種などは明らかにしていない。しかし、BYD は2022年10月、ブラジル北部のバイーヤ州政府と米国自動車メーカーのフォードの工場跡地の購入意向に関する覚書に署名している。同工場は州内カマサリ市に所在し、2021年に生産を停止していた。同文書によると、BYDは5億8,800万ドルを投入して、1,200人を直接雇用し、(1)リン酸鉄とリチウム(国産粗鉱を使用)の精製、(2)EVバス・トラックシャーシの生産、(3)プラグインハイブリッド(PHEV)とEVの乗用車生産の3ライン生産を行うとしている(2022年11月28日付バイア州政府プレスリリース)。BYDは2022年11月に、ブラジル市場にPHEVのSUV(スポーツ用多目的車)「宋PLUS DM-i」とEV専用車のSUV「元PLUS」の2モデルの発売開始を発表している。その際にも、両モデルのブラジル現地生産の意向を明らかしていた。

BYDはブラジルに最初にEVバスを導入したパイオニアで、ブラジルへの進出は10年近く前にさかのぼる。2013年にサンパウロ州に事務所を開設したのを皮切りに、2015年には、同州カンピーナス市にEVバスとリン酸鉄リチウムイオン電池モジュールの組立工場が完成。2017年には、同市でEVバス用シャーシと太陽光電池パネルの工場が稼働した。2018年には、アマゾナス州都マナウスで電池の生産を始めている。BYDは、2022年11月時点で9店舗だったブラジル国内の販売店を、45都市100店舗に拡大する計画を明らかしており、現地生産を視野に入れた乗用車・バスへの販売対応を進めているといえそうだ。

(大久保敦)

(ブラジル、中国)

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