為替市場と決済の両面で人民元需要がロシアで高まる

(ロシア、中国)

欧州課

2023年04月19日

ロシアの外国為替市場で中国通貨の人民元が存在感を増している。ロシア中央銀行の4月10日の発表によると、3月のモスクワ取引所での人民元の取り扱い割合は、通貨取引の39%を占め、過去最高となった。これまでは2022年12月と2023年2月の37%が最高だった。その一方で、ドル/ルーブルの取引割合は34%と過去最低となった(添付資料図参照)。

その理由として、投資会社アリカピタルのセルゲイ・スベロフ投資ストラテジストは、a.ロシアと中国間の貿易が大きく増加したことで決済通貨としての需要が高まった、b.ドルやユーロなど「非友好国」通貨による取引は米国やEUの制裁の対象となるリスクがあるとロシア国内で認識が広まり、需要が減少した、c.個人の人民元口座の開設や企業の人民元建て社債の発行が増加した、などが背景にあると分析している(ビジネスFM4月6日)。

米国とEUの金融制裁(2022年2月25日同3月1日同3月3日記事参照)の対象となっているロシアの銀行が人民元の取り扱いを増やしていることも一因との見方もある(「フォーブス」ロシア語版4月7日)。

中銀の3月9日の発表によると、貿易決済でも人民元の取り扱いは増加している。外国為替市場での取引ほどの急激ではないが、輸出決済に占める割合は2022年1月の0.4%から2023年1月には16%に上昇した。その一方、ドル・ユーロを中心とする西側諸国通貨による決済比率は87%から48%へ低下した。人民元の輸入取引決済に占める割合は、2022年1月の4%から同年12月には23%に上昇した。

(欧州課)

(ロシア、中国)

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