デジタル関連法への対応迫られる米企業、米USTR2023年外国貿易障壁報告書(EU編)

(米国、EU)

米州課

2023年04月10日

米国通商代表部(USTR)は3月31日に発表した2023年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」(2023年4月5日記事参照)で、EUに対して、2022年7月に欧州議会が採択したデジタル市場法(DMA)、デジタルサービス法(DSA)などデジタル貿易の障壁に言及した(注)。2023年版は32ページを充て、前年の48ページから減少した。

DMAに関しては、1つ以上のコア・プラットフォーム・サービスを提供するプロバイダーが欧州委員会に「ゲートキーパー」として指定されると、6カ月以内にDMAで規定する義務の順守が求められることを懸念点として挙げている。

DSAについては、大規模なデジタルサービス供給者への規制を設けることを認めており、「超大型オンラインプラットフォーム(VLOP)」に違法なコンテンツの流布や、特定の基本的な権利の行使に対する悪影響、意図的なサービスの操作などの「システミックリスク」に対応することが求められると記載している。その上で、欧州委員会がVLOPに指定すると4カ月以内に義務を順守することが求められ、VLOPに指定されないその他のプラットフォームは、2024年2月17日までにDSAのコンプライアンスに準拠する必要がある点を障壁として挙げている。

さらに、「EU一般データ保護規則(GDPR)」を強化するとみられるデータ法案(Data Act、2022年2月28日記事参照)と、新技術に対応する人工知能法案(AI Act、2021年4月23日記事参照)がEUでそれぞれ審議中で、これらの法案にも注視しているとしている。GDPRについては、EUは継続してガイドラインを発表しているが(2022年6月4日記事参照)、米国企業はGDPRの実施と執行で一貫したガイダンスを求めていると記載した。

また、EU機械指令の規則化などの進捗を監視しているとし、適合性評価手続きへの懸念を示した。

なお、報告書は、2022年10月に発出された大統領令の「EU米国データ・プライバシー枠組み(DPF)」(2022年10月11日記事参照)にも触れている。この新たな枠組みを設けたことで、欧州委員会がデータ・プライバシー・フレームワークの新たな妥当性判断を採用する根拠となる。また、EU法の下で重要かつアクセス可能で安価なデータ転送メカニズムを回復することになり、企業にとって、より大きな法的確実性を提供することになると説明している。

(注)EU理事会(閣僚理事会)では、DMAとDSAが2022年7月、10月にそれぞれ正式に採択され(2022年7月19日記事2022年10月6日記事参照)、11月に相次いで発効した。

(松岡智恵子)

(米国、EU)

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