EU理事会、仲介サービス事業者を規制するデジタルサービス法案を採択

(EU)

ブリュッセル発

2022年10月06日

EU理事会(閣僚理事会)は10月4日、オンライン仲介サービスを提供する事業者に対する規制枠組みであるデジタルサービス法案(DSA)を正式に採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州議会は7月にDSAを正式に可決しており(2022年7月11日記事参照)、今回の理事会の採択により実質的な審議は完了した。今後DSAは、形式的な署名を経て、EU官報に掲載から20日後に施行され、主要部分は施行から15カ月後から適用を開始する。

DSAは、ソーシャルメディアやオンライン・マーケットプレイス、検索エンジンなど、EU域内でオンライン上の仲介サービスの提供する全事業者が規制対象となる。仲介サービスの透明性や事業者の説明責任を強化し、利用者の基本的権利を保護することが目的だ。事業者の規模や社会的影響に応じて規制内容を強める制度設計となっており、透明性に関する報告といった基本的な義務は全ての事業者に適用されるが、違法なコンテンツの拡散や基本的権利への悪影響といったリスク評価と緩和措置の実施を含む最も厳しいルールは、EU域内の利用者が月間平均4,500万人以上の事業者が該当する「非常に大規模なオンラインプラットフォーム(VLOP)」および「非常に大規模なオンライン検索エンジン(VLOSE)」事業者のみに適用される。

欧州委員会の当初案(2020年12月22日記事参照、注)との対比では、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、オンライン上の情報操作に対応する「危機対応メカニズム」を導入する点が特徴的だ。同メカニズムでは、紛争のほかパンデミックやテロといった危機において利用者の基本的権利の侵害を防ぐべく、欧州委がVLOPおよびVLOSE事業者に対して、危機がもたらす脅威に応じた効果的な対処法を特定し、必要な措置を講じるよう求めることができる。

なお、DSAと並んで、EUのオンラインプラットフォーム政策の中核をなすデジタル市場法(DMA)は、7月に理事会および欧州議会の採択を経て(2022年7月19日記事参照)、先行して正式な署名が9月15日に完了し、10月13日の官報掲載が予定されている。

(注)詳細は、調査レポート『EUデジタル政策の最新概要(2021年10月)』を参照。

(安田啓)

(EU)

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