グリーン水素工場の建設着工、南部チャビン省
(ベトナム)
ホーチミン発
2023年04月14日
ベトナム南部チャビン省で3月30日、地場グリーンソリューショングループ(注1)傘下のTGSチャビングリーン水素がグリーン水素工場の建設に着工した。同グループが建設予定のグリーン水素工場は、同省に隣接するベンチェ省の計画と合わせて、国内2カ所目となる(2022年6月7日記事参照)。同日開催された起工式には、グエン・ティ・キム・ガン元国会議長のほか、商工省副大臣などの政府関係者らが出席した(チャビン省オンライン広報3月30日)。
同工場では、海水の電気分解によってグリーン水素(注2)を年2万4,000トン、酸素を年19万5,000トン製造する予定。ベンチェ省で建設中のグリーン水素工場と合わせると、グループ内でグリーン水素を年8万4,000トン、酸素を年68万5,000トン、アンモニアを年37万5,000トンの生産を目指す。
投資総額は8兆ドン(約456億円、1ドン=約0.0057円)で、ドンハイ地区の海岸に隣接する土地(21ヘクタール)に建設する。操業開始は2025年を予定。同工場の稼働により、300~500人規模の雇用創出が見込まれる。
同工場の担当者によると、チャビン省を選んだ理由は、地理的に原料として使用する海水の供給が豊富な上、省内で生産された再生可能エネルギー(注3)を活用することができ、建設可能な土地を迅速に割り当てられたためという。製造されたグリーン水素は日本やオーストラリア、シンガポールに輸出する計画だ(ジェトロによるヒアリング4月7日)。また、再生可能エネルギー分野の高度人材は、省内にあるチャビン大学などからの人材のほか、国外の人材を雇用するという。
グリーン水素は液化天然ガス(LNG)輸送インフラでの貯蔵輸送が期待されており、さまざまな産業で使用できるほか、化石燃料に代わるエネルギーとして注目されている。同工場の完成は、同省がメコンデルタ地域のグリーンエネルギー集積地の1つとなり、政府が定める2050年までの温室効果ガス(GHG)排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)の目標(2021年11月9日記事参照)の達成に寄与することが期待される。
着工式の様子(グリーンソリューショングループ提供)
(注1)グリーンソリューショングループ(The Green Solutions Group)はエネルギー関連の地場企業で、太陽光発電や風力発電、液化天然ガス(LNG)、バイオマスの再生可能エネルギープロジェクトに携わっている。
(注2)再生可能エネルギーを使用し、製造工程でも二酸化炭素(CO2)を排出せずに製造された水素。
(注3)チャビン省人民委員会によると、同省内では2022年11月時点、太陽光発電所〔計140メガワット(MW)〕と風力発電所(計322MW)が稼働中。
(児玉良平、ダン・ティ・ゴック・スオン)
(ベトナム)
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