ベトナム首相、2050年までに温室効果ガス排出ゼロ目指す、COP26で表明
(ベトナム)
ハノイ発
2021年11月09日
ベトナムのファム・ミン・チン首相は11月1日、英国で開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)首脳級会合で、2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指すと表明した。
チン首相は、気候変動問題に対する国際社会の団結を訴え、全ての国がそれぞれの能力や状況に応じて温室効果ガスの排出量削減に取り組む必要があると強調した。ベトナムについては、30年余り前に工業化を始めたばかりの発展途上国だが、2050年までに排出量実質ゼロを達成するため、再生可能エネルギー分野の強みを生かし、排出量削減に向けた強力な対策を講じると述べた。同時に、先進国に対して、パリ協定も念頭に金融面や技術面での支援を十分に実施するよう訴えた。
ベトナムはこれまで、パリ協定に基づく温室効果ガスの削減目標(注1)として、2030年までに気候変動対策を実施しなかった場合(注2)と比べて国内の自助努力で9%(8,390万トン相当)削減、国際援助を加えて27%(2億5,080万トン相当)削減と掲げていた(2021年4月28日付地域・分析レポート参照)。この削減目標と比べると、今回言及された2050年のカーボンニュートラル達成ははるかに野心的な目標となっており、具体的なプロセスは明らかになっていない。
気候変動対策の一環として、ベトナム商工省が2021年10月に作成した第8次国家電力マスタープラン(PDP8)草案では、今後新たな石炭火力発電所の計画を制限し、電源構成における石炭火力の割合を減らしていく方針が示されている。一方で、風力や太陽光といった再生可能エネルギーの発電容量は、2030年までに倍増させる計画だ。
チン首相は、COP26の会合に参加した岸田文雄首相ら各国首脳とも会談を実施し、気候変動対策での連携などを確認した。また、気候変動対策分野でのベトナム企業と欧州企業の連携も進められた。チン首相が立ち会いの下、ベトナムのBDGエナジーと欧州のシーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー(SGRE)は、風力発電開発にかかる協力覚書に署名した。SGREは、ベトナムでBDGエナジーが開発する風力発電案件に、4億ドル規模で設備などを導入する予定だ。
(注1)パリ協定に基づく「国が決定する貢献」(NDC:Nationally Determined Contribution)。
(注2)2014年を基準年に作成したBAU(Business As Usual)シナリオに基づく。
(庄浩充)
(ベトナム)
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