商品バランス制度やデジタル製品通関申告に懸念示す、米USTR2023年外国貿易障壁報告書(インドネシア編)

(米国、インドネシア)

米州課

2023年04月10日

米国通商代表部(USTR)は3月31日に公表した2023年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」(2023年4月5日記事参照)で、インドネシアについて、関税など輸入政策による米国産品の輸出障壁や、各産業分野での米国企業の進出障壁、デジタル貿易にかかる懸念などを報告した。同国の記載には前年と同じ17ページを充て、2023年版NTEの報告対象国・地域別で、中国(41ページ)、EU(32ページ)に次いで3番目に多かった。

関税について、インドネシアは過去10年間で、同国産品と競合する電子製品や化学製品、農産品など、さまざまな品目の実行関税率を引き上げていると指摘した。特に自動車、鉄鋼、一部の化学製品などは35.5%を超える関税が賦課されているか、譲許(注)されていないと課題視した。農水産品については、1,300以上の品目で譲許税率が35.5%以上になっているとした。

非関税障壁では、多数の重複する輸入許認可要件が同国市場へのアクセスの妨げになっていると指摘した。具体的には、同国政府が商品の生産量と消費量のバランスに基づいて輸入の許認可を行う「商品バランス制度」(2022年8月16日記事参照)に対して、貿易制限的な措置だと指摘した。2023年に同制度に基づいて輸入制限対象となる農林水産品に砂糖、コメ、魚、肉、塩、トウモロコシを挙げつつ、同国が制限対象品目の包括的なリストを提供しておらず、また、米国企業は複数省庁の矛盾する規制要件に対応することを強いられていると報告した。同国への農水産品輸出についは、衛生植物検疫の障壁も指摘し、肉、乳製品、卵、レンダリング製品などを同国に輸出する企業に対して同国政府への施設登録を求めていることについて、不透明で負担が大きいと課題視した。

デジタル貿易分野では、電子的に送信されるデジタル製品について、同国政府が2023年1月から、デジタル製品の実行関税率が0%にもかかわらず、デジタル製品の代金を受け取ってから30日以内に通関申告するよう求めていることについて(2023年2月15日記事参照)、同国が将来的にデジタル製品に関税を課すという懸念も生じさせる措置だと指摘した。また、デジタル製品に対して、現実的にどのように関税を賦課するのか大きな疑問とした上で、この疑問に対する回答によっては、サイバーセキュリティー、プライバシー、データ保護に関する重大な懸念を引き起こすと報告した。

(注)WTO加盟国・地域からの輸入に対して、一定率以上の関税を課さないことを約束すること。

(葛西泰介)

(米国、インドネシア)

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