中銀予測、2023年のGDP成長率は4.0~5.0%に鈍化

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年04月03日

マレーシア中央銀行は3月29日に発表した2022年の年次報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、2023年の実質GDP成長率を4.0~5.0%と予測した(添付資料表参照)。高成長を記録した前年の8.7%から減速するとしつつ、「成長見通しのリスクは上下方向で均衡している」との見立てから、財務省が2月に出した見通しにと足並みをそろえたレンジを示した(2023年3月7日記事参照)。

経済成長を下支えするのは内需で、個人消費は前年の11.3%を下回るものの、6.1%で拡大する見込みだ。産業別では、建設業(6.3%)やサービス業(5.0%)で堅調な伸びが見込まれる。特に後者では、観光や消費分野の回復が引き続き成長を牽引するとみられる。

中銀によると、経済成長を牽引する要素として、複数年にわたる大型投資プロジェクトの継続的な実施、雇用環境や所得水準の改善、観光活動のさらなる回復などが想定されている。他方で、リスク要因としては、高インフレや世界的な金融引き締めを背景とした世界経済・貿易の成長鈍化、生活費や投入コストの上昇を挙げた。

2023年のインフレ率は2.8~3.8%

今回の見通しで、中銀は2023年のインフレ率を2.8~3.8%と予測。2022年中はインフレ率が上昇を続けたが、第4四半期(10~12月)以降動きが緩やかになったとし、供給制約の改善や世界需要の軟化によりコスト環境が改善すると分析した。エネルギー価格や食品価格を除いたコアインフレ率も、総合インフレ率と同様に最大3.8%と見込んでいる。しかし、地政学リスクの悪化による世界的な物価高止まりや、中国の需要急増、補助金や価格統制政策の変更といった要因により、インフレ見通しには不透明感も残ると指摘した。

金融政策に関して、ノル・シャムシア・ユヌス総裁は3月29日の記者会見で「緩和の度合いをさらに調整する余地がある」と、政策金利の引き上げ再開を示唆した。中銀は2022年中に4会合連続で政策金利を引き上げて、2.75%としたが(2022年11月4日記事参照)、2023年に入ってからは利上げを実施していない。同総裁は金融緩和の進展について「変化する国内外環境と、それがインフレ率や成長見通しに与える影響を見極め、金融政策会合で検討していく」とし、利上げの再開時期は明言しなかった。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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