2023年修正予算案は過去最高額、中低所得層支援に力点

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年03月07日

マレーシア財務省は2月24日、2023年度の修正予算案を下院に提出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。前政権が2022年10月に予算案を提出していたが(2022年10月14日記事参照、以下、当初予算案)、その後に議会が解散されたため、現政権下で再提出された。予算案は2023年4月6日まで審議される。

予算案の歳出規模は、2022年の歳出実績から2.3%減の3,861億リンギ(約11兆8,500億円、1リンギ=約30.7円)に縮小するも、当初予算案からわずかに拡大し、予算案としては過去最高額を計上した。歳入は1.0%減の2,915億リンギとした(添付資料表参照)。

同日に発表した改定版経済見通しで財務省は、2023年の実質GDP成長率を4.5%と予測した。当初見通しでは、4.0~5.0%と幅を持たせた予測を示していた。同年のインフレ率は2.8~3.8%(当初見通しでは2.8~3.3%)とした。

中低所得層や中小零細企業への支援手厚く

予算案では「マレーシア・マダニ(持続可能性、繁栄、革新、尊敬、信頼、思いやり)の推進」をテーマに、主に生活費上昇の抑制、社会的セーフティーネットの強靭(きょうじん)化、中小零細企業のエコシステム強化に注力する姿勢を打ち出した。

中低所得層向けに優遇措置を盛り込む一方、これらの層の負担増にならないかたちでの税収増に向けた改革案が示された。例えば、中小企業向け減税としては、年間所得15万リンギを上限に、法人税率を17%から15%へ引き下げる。当初予算案よりも所得上限を引き上げ、中小企業への恩恵をより厚くする。個人に対しても、課税所得3万5,001~10万リンギの中所得層向けの措置として、所得税率を2ポイント引き下げる。一方、課税所得10万1~100万リンギの層に対しては所得税を0.5~2.0ポイント引き上げる。マレーシアで就労する外国人駐在員の大半が増税対象になる見込みだ。また、高級ブランド品などを対象とした奢侈(しゃし)税を導入する。さらに、非上場企業株の譲渡益を対象としたキャピタルゲイン課税を2024年にも導入するとしており、詳細次第では企業の拠点設置戦略に影響を与えうる。

歳出の内訳では、公務員給与や物品・サービス調達費などの一般歳出が前年比1.2%減の2,891億リンギだった。公共投資を中心とした開発支出は、35.5%増の970億リンギへと大きく増加した。新型コロナウイルス特別措置法下で設置された特別信託基金は削除された。

税制では電気電子や航空宇宙産業の振興、脱炭素も優遇

企業活動に影響しうる税制改正案としては、製造業・サービス業における自動化の優遇措置の上限額引き上げ、航空宇宙産業に対する優遇措置、事業拠点をマレーシアに移管する電気電子産業企業への優遇措置、などがあった。

脱炭素の関連では、当初予算案と併せて発表された税制改正案を踏襲し、二酸化炭素回収・貯留を実施する企業に対する投資税額控除、電気自動車(EV)充電設備の製造に対する優遇税制、EV完成車や国内組み立てにかかる各種税免除などを引き続き盛り込んだ。また新規措置としては、詳細は未定ながら、データセンターやクリエーティブ産業への税制措置が提案されている。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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