米議会、ウイグル強制労働防止法の輸入審査の透明性向上をバイデン政権に要請

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年04月13日

米国連邦議会のクリストファー・スミス下院議員(共和党、ニュージャージー州)らは4月11日、国土安全保障省(DHS)のロバート・シルバース次官に対し、ウイグル強制労働防止法(UFLPA)の執行状況に懸念を示す書簡を送付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同議員は中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC、注1)の議長を務め、書簡には、CECCの共同議長を務めるジェフ・マークリー上院議員(民主党、オレゴン州)のほか、マルコ・ルビオ上院議員(共和党、フロリダ州)、ジェームズ・マクガバン下院議員(民主党、マサチューセッツ州)も署名した。書簡に署名した4人の議員は、UFLPAの成立で主導的な役割を果たしており、書簡で同法の適正な執行の必要性を強調した。

UFLPAは中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品の輸入を原則禁止しており、輸入禁止措置は2022年6月に施行された(2022年8月5日付地域・分析レポート参照)。UFLPAの執行はDHS傘下の税関・国境警備局(CBP)が担っており、シルバース次官は米国政府の強制労働執行タスクフォース(FLETF)の議長を務めている。

スミス議員らは書簡で、UFLPAに基づいて差し止められた物品の輸入審査の透明性向上を求めた。具体的には、新疆ウイグル自治区が関与しているとの疑いで差し止められた物品でも、UFLPAの適用対象外とCBPが最終的に判断し、議会に報告されないまま輸入が認められている事例があることに言及(2023年3月17日記事参照)。これが「UFLPAの趣旨を逸脱している」と問題視した。

スミス議員らはまた、「UFLPAエンティティー・リスト」(2022年8月4日記事参照)の拡大を要請した。多くの市民団体が新疆ウイグル自治区での強制労働に関与している事業者について報告しているにもかかわらず、それら事業者が同リストに掲載されていないと指摘した。「リスト掲載事業者の数と範囲は、FLETFによるUFLPAの実施へのコミットメントを示す重要な指標だ」と説いた。

スミス議員らは、新疆ウイグル自治区産の原材料を含んだ製品の第三国からの輸入に対処する必要性も強調した。CBPに対し、UFLPAの執行戦略を次回改定する際に、この課題への対応方針を報告するよう求めた。 加えて、電子商取引を主なチャネルとする少額輸入(注2)がUFLPAの執行の抜け穴になっているとして、この問題への対応も問いただした。

連邦議会はUFLPAの執行状況の監視を続けており、上院では通商を所管する財政委員会のロン・ワイデン委員長(民主党、オレゴン州)が自動車産業のサプライチェーンに関する調査を進めている(2023年3月30日記事参照)。UFLPAの執行強化を求める声はこれまでも民主、共和両党の議員から上がっており、バイデン政権が執行戦略を見直す中で具体的な対応策を打ち出す可能性もある。

(注1)議会上下両院の議員と、大統領が指名した政府高官で構成する委員会。中国の人権と法の支配状況を監視し、大統領と議会に年次報告書を提出する義務を負う。

(注2)米国では、輸入貨物の申告額が非課税基準額(デミニミス)である800ドル以下の場合、原産地などの情報を申告せずに輸入可能となっている。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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