ボッシュ、蓄電池リサイクル工場向けに欧州初の全自動放電処理設備を納品

(ドイツ)

ミュンヘン発

2023年04月14日

ドイツ自動車部品大手ボッシュは4月5日、蓄電池リサイクル施設向けに、欧州初となる全自動の使用済み蓄電池の放電処理・破砕設備、ソフトウエアを納品すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

バッテリー・ライフサイクル・カンパニー(BLC)がベルリンの西約140キロに位置するマクデブルクに蓄電池リサイクル工場を新設し、そこにボッシュ子会社のボッシュ・レックスロス(Bosch Rexroth)が設備とソフトウエアを納める。BLCは、水道・環境サービス大手レモンディス(REMONDIS)傘下のTSRリサイクリング(TSR Recycling)と物流大手レイノス(Rhenus)の自動車物流部門レイノス・オートモーティブ(Rhenus Automotive)が4月に設立した合弁会社だ。

ボッシュが納める設備では、電気自動車(EV)に搭載するリチウムイオン蓄電池8個を全自動で15分以内に同時に放電処理できる。通常の放電処理は最大24時間を要するとされ、大幅な効率化につながる。また、同設備は蓄電池の種類によって異なる構造を認識できるため、電気ショートや発火を抑えられる。BLCの施設では年間最大1万5,000トンの蓄電池材料をリサイクルする計画で、2023年夏に操業開始の予定だ。

欧州では今後、蓄電池のリサイクル需要が急増するとみられる。フラウンホーファー・システム・イノベーション研究所(ISI)の試算外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、欧州でリサイクルできる蓄電池の量は、2030年に420キロトン、2040年に2,100キロトン(注)に増加する。現状のリサイクル量は年約50キロトン。また、リサイクルしているのは主に蓄電池生産時の不良品だが、2035年ごろから、EVに搭載していた使用済み蓄電池の割合が最大になるとみられる。これを受け、ISIは欧州のリサイクル設備に対しても、2040年までに約66億ユーロの投資が必要になるとした。

実際に、ドイツ国内でも蓄電池のリサイクル工場が立ち上がっている。例えば、メルセデス・ベンツは南ドイツのクッペンハイムに蓄電池リサイクル工場を建設中で、2023年末までにリチウムイオン電池リサイクルの破砕工程を開始する予定(2023年3月10日記事参照)。また、フォルクスワーゲンは2021年1月、ドイツ北部ニーダーザクセン州ザルツギッターで、EV搭載蓄電池のリサイクル施設を開設、パイロット運用を開始している(2021年2月8日記事参照)。

なお、ボッシュは同社の蓄電池リサイクル技術を4月17~21日に開催される世界最大級の総合産業見本市「ハノーバーメッセ2023」で展示する予定だ。

(注)シナリオによって、2030年は200~800キロトン、2040年は1,100~3,300キロトンの幅がある。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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