欧州ICT業界、次期EU議長国スペインに政策提言

(EU)

ブリュッセル発

2023年04月24日

欧州の情報通信技術(ICT)関連産業団体デジタルヨーロッパなどは4月18日、EU理事会(閣僚理事会)議長国に7月に就任するスペインへの政策提言を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。スペインはデジタルを経済戦略の中心として、企業での規制の実証(サンドボックス)、欧州初の人工知能(AI)の監督を担う国家機関の設立、スタートアップ支援の法制化などに取り組んできた実績があるとして、その手腕に期待を示した。

提言では、スペインは議長国として取り組むべき8つの優先課題があるとして、(1)EU単一市場としてのルールの調和、(2)デジタル化の加速、(3)米国との連携強化、(4)AI分野でのグローバルリーダーの地位確立、(5)データ法(2022年2月28日記事参照)の再考、(6)サイバーセキュリティー対策の強化、(7)コネクティビティー強化、(8)スタートアップ企業優遇策を挙げた。

(2)デジタル化の加速については、欧州委員会のグリーン・ディール産業計画(2023年2月3日記事参照)やネットゼロ産業法案(2023年3月20日記事参照)で、気候変動やエネルギー危機への対応にデジタル技術の活用が見落とされた点を指摘した。活用促進に向け、「リパワーEU」計画(2022年9月1日付地域・分析レポート参照)や、EUレベルでネットゼロ産業への補助金提供を行う予定の「欧州主権基金」などについても、復興レジリエンス・ファシリティー(2020年9月18日記事参照)と同様に、予算の20%以上をデジタル化に割り当てることを義務化すべきだとした。

(3)対米関係では、EU米貿易技術評議会(TTC)で進捗があったものの(2022年12月6日記事参照)、AIやクリーンテックに関するグローバルな技術基準の策定や、重要な原材料や半導体などの供給確保に向けた両者のさらなる連携が双方のデジタル経済にとって重要だと述べた。

(5)データ法案については、企業間のデータ共有のリスクなどについて「非常に大きな懸念が残っている」とし、スペインが議長国となる7月以前に法案が最終承認されていない場合、法案の一部見直しを求めた。7月以前に最終承認された場合は、多くの企業に大きな負担がかかることが予想され、スペインが議長国として円滑な法案実施に優先的に取り組み、また、デジタル化され、強靭(きょうじん)で競争力が高い単一市場の実現に向け、クラウドサービスを優先する施策の検討を求めた。

(8)スタートアップ企業優遇策を巡っては、スペインで1月、欧州初とみられるスタートアップ支援策を法制化した通称「スタートアップ法」(2021年12月14日記事参照)が施行された。提言では、EUレベルにこうした枠組みを拡大し、新興テック企業への支援や、人材誘致、スタートアップエコシステムへの投資拡大に取り組むべきだとした。

(滝澤祥子)

(EU)

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