スタートアップ法案を閣議承認、優遇税制や「デジタルノマド」査証で投資・人材誘致

(スペイン)

マドリード発

2021年12月14日

スペイン政府は12月10日の閣議で、スタートアップへの資金や人材誘致を促進してデジタルハブを構築するための「新興企業エコシステム振興法」(通称「スタートアップ法」)の法案を承認した。法案は議会で審議され、2022年半ばの施行を目指している。

同法案では、対象となるスタートアップについて、スペインに新規設立または設立5年以下(注1)の独立した未上場企業で、年間売上高500万ユーロ以下の革新的な技術を有する企業と定義し、中小企業や大企業と明確に線引きした。また、起業とエグジット(または廃業)を繰り返す「連続起業家(シリアルアントレプレナー)」も最大3回まで同法の恩恵を受けられる。スタートアップの起業にはリスクもあることから、セカンドチャンス、サードチャンスを与える意味合いもある。

スタートアップ向けの法人減税として、設立から初めて課税所得がプラス(利益計上)となった年度から最大4カ年度は、法人税率を通常の25%から15%に引き下げる。スタートアップ創業当初に出資を行うエンジェル投資家は、課税所得から控除できる投資額の割合が現行の30%から50%に、金額上限も年間6万ユーロから10万ユーロに拡大する。この優遇措置は、起業家自身にも適用が拡大される。また、人材獲得のためのストックオプション税制として、取得した株式の上場・売却時に発生する所得の非課税枠を現行の年間1万2,000ユーロから5万ユーロに拡大する。

設立などの手続きもスムーズに

スタートアップの新規設立手続きは、オンラインで最短6時間以内に可能となり、設立時の公証手数料や登記料も撤廃する。国家イノベーション公社(ENISA)にワンストップサービス窓口を設置し、同法の適用認定を行う。また、非居住者の投資家は外国人登録番号(NIE)の取得が不要となり、納税者番号(NIF)のみで済む。

人材誘致策の要となるのは、高度デジタル人材や、移住起業家、多国籍企業の越境テレワーカーなどを対象とする「デジタルノマド」査証だ。迅速な査証給付により、本人・帯同家族も含めて5年間の居住・就労が可能。また、従来、外資系企業の幹部や外国人サッカー選手などに適用している非居住者向け優遇所得税率24%(注2)を最大6年間にわたり適用する。

また、国外からの人材帰還を促すため、この優遇税制措置を受けるための非居住者判定基準、つまり国外居住期間の要件を通常の過去10年間から過去5年間に緩和。さらに、他国に移住したスペイン人が帰還して起業する場合などにも適用する。

その他、産官学連携を奨励し、これまで金融分野のみに限定して実施していたイノベーションの試験運用制度(規制サンドボックス)を全セクターに広げる。

同法案は、スペイン・スタートアップ協会など国内のエコシステムからも支持されている。

(注1)バイオ、エネルギー、製造などの戦略的分野や、スペイン発の技術を持つ企業の場合は設立7年以下。

(注2)居住者の個人所得税は19、24、30、37、45、49%の累進税率。24%は年収1万2,450~2万200ユーロ帯に適用される低い税率。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

ビジネス短信 304e221c3a4dffb3