米国際貿易裁判所、301条対中追加関税の維持を認定、輸入者側は上訴の構え

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年03月22日

米国の国際貿易裁判所(CIT)は3月17日、トランプ前政権時代に米通商代表部(USTR)が1974年通商法301条に基づいて発動した、対中追加関税(301条関税)の一部に関し、維持を認めるとの裁定を下したPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)

本件は、301条関税が課された中国原産品を輸入する米国内の事業者が、米政府を相手取って提訴した案件となる。提訴の要点は、トランプ前政権により2018年7月以降4回に分けて発動された301条関税のうち、後半2回(いわゆるリスト3とリスト4A、注)は無効とすることを求めたもの。CITは2021年2月に、関連する一連の訴訟を3人の裁判官で構成するパネルの判断に付すとし、審理が進められてきた。

CITは2022年4月、リスト3とリスト4Aの301条関税について、当時のパブリックコメントなどで提起された反対や賛同の意見、米国経済への損害、取り得る代替手段などを勘案した上で、USTRがどう最終決定に至ったのかを説明しきれていないとし、301条関税を正当化する根拠を再考するか、追加説明を行うよう求めていた(2022年4月7日記事参照)。CITは今回の裁定で、USTRがこれらの点について十分な説明を行ったとして、301条関税の維持を認めた。例えば、米国経済への損失について、USTRは経済の混乱を避けるために専門家を交えて消費者への影響を検証し、しかるべき品目を301条関税の対象から除外したことや、対中輸入依存度が高い品目を分類して発動を遅らせる検討をしたことなどを追加説明したとしている。

301条関税の継続を主張しているバイデン政権にとって今回の裁定は勝利に当たるが、原告である輸入事業者を代表する弁護士団は早くも上訴の構えをみせており、今回で訴訟の結果が最終的に確定するかは不透明だ(政治誌「ポリティコ」電子版3月17日)。3月15日には、貿易に関する事実認定を行う国際貿易委員会(ITC)が301条関税による経済的影響に関する報告書を公表しており、関税による輸入価格増の負担は米国の輸入業者がほぼ全額負担したとしている(2023年3月20日記事参照)。USTRは301条関税の見直しを進めているが、同報告書も考慮に入れるとしている。

(注)2018年9月に発動した輸入額約2,000億ドル相当の5,745品目に対する追加関税(いわゆるリスト3)と、2019年9月発動の輸入額約1,100億ドル相当の3,243品目(いわゆるリスト4A)の2回。リスト3は当初10%だった追加関税率が2019年5月に25%へ引き上げられ、リスト4Aは当初15%だった追加関税率が2020年2月に7.5%へ引き下げられ、いずれもそのまま現在に至っている。

(磯部真一)

(米国、中国)

ビジネス短信 bef1c4b1e09d644c