米国際貿易委、232条・301条関税の経済的影響に関する報告書公表

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年03月20日

米国の国際貿易委員会(ITC)は3月15日、トランプ前政権から継続されている1962年通商拡大法232条に基づく鉄・アルミ製品に対する追加関税(232条関税)と1974年通商法301条に基づく中国原産品に対する追加関税(301条関税)による経済的影響に関する報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。報告書では、輸入価格が関税と同じ割合で上昇したため、米国の輸入業者がこれらコストをほぼ全額負担したと述べている。

ITCは主に貿易に関する事実認定を行う独立の連邦政府機関で、今回の報告書は連邦議会上下院の歳出委員会の指示を受けて作成した(2022年5月9日記事参照)。232条関税は2018年3月から、301条関税は2018年7月から発動され、一部の輸入品目は条件次第で追加関税の適用除外などの例外措置を受けているが、バイデン政権発足以降も継続されている。報告書では2018~2021年を平均した両関税による米産業界に対する経済的影響を分析した内容となっている。

232条関税については、鉄鋼製品の米国への輸入を24%減少させ、国内価格を2.4%押し上げるとともに、国内での生産を1.9%増加させたとしている。アルミ製品については、輸入が31%減、国内価格が1.6%増、国内生産が3.6%増の影響を受けたとした。232条関税による国内サプライチェーンへの影響としては、国内での原材料調達が増えたことでその価格が上昇し、結果として下流での生産が減少したとしている。ただし、減少幅は0.6%で、影響は産業分野ごとに異なるとしている。

301条関税については、中国からの輸入を13%減少させた一方、米国内の生産を0.4%押し上げ、米国製品の価格を0.2%増加させたとしている。こちらも産業分野ごとに影響は異なるとしている。例えば、コンピュータ機器の輸入は5%減で国内価格は0.8%増、国内生産は1.2%増にとどまった一方、半導体では輸入が72.3%減で国内価格は4.1%増、国内生産は6.4%増となったとしている。対象が鉄・アルミ製品に限定されている232条関税と異なり、301条関税の対象は広範にわたるため、各産業の下流での影響は分析の対象外となっている。そのような調査対象の限定や調査対象期間が3年間と短期間となっている点も含めて、ITCは「報告書は232条関税・301条関税の影響を完全に精査したものではなく、両関税が経済全体に対して総じて利益をもたらしたかを結論付ける材料とはならない」とことわっている。現在、301条関税の見直しを進めている米通商代表部(USTR)は報告書について、「232条関税は中国のような国での非市場的な過剰生産能力が米国の産業の存続を脅かしていることに対抗するために発動されている。米国は引き続き、中国の反競争的・非市場的慣行から労働者と市場を守るべく、世界の同盟・友好国と協力していく。301条については、重要だが不完全な今回の結果を考慮に入れる」としている(通商専門誌「インサイドUSトレード」3月16日)。

 (磯部真一)

(米国、中国)

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