米テスラがバッテリー生産工場の新設意思示すも、メキシコ政府は助成金給付を拒否
(メキシコ、米国)
メキシコ発
2023年03月28日
メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は3月21日にオアハカ州で行われた早朝記者会見で、米国テスラの最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏との電話会談で打診されたバッテリー工場新設にかかる助成金の拠出を拒否したことに言及した。
AMLO大統領によると、電話会談の中でマスク氏はメキシコに新たにバッテリー生産工場を設立する可能性について言及。テスラは既にヌエボレオン州に新工場の設立を発表しており(2023年3月6日記事参照)、ここに供給するバッテリーを生産したい考えだ。
しかし、マスク氏からは投資に当たり、米国政府が与えるインセンティブと同様、メキシコ政府から投資金額の50%を助成してほしいという提案があった。AMLO大統領はこれについて、バッテリー工場設立に異論はないとするも、助成金については「(一方的に助成金を給付することは)われわれの方針とは異なる」として、この提案を退けたという。
助成金の代わりに、AMLO大統領が提示したのは、メキシコの労働者が責任感の強い働き者だという利点だ。マスク氏もこの点には同意したという。同日の早朝記者会見で、AMLO大統領はメキシコが持つ強みとして、水、電気をはじめとした自然資源、平均年齢29歳という若さを誇る豊富な労働人口を挙げた。
バッテリー向けリチウムの調達場所にも注目集まる
テスラは自社EVに使用するバッテリー量産化のため、シグマ・リチウム(注)の買収を検討している(2023年2月20日記事参照)ことが報じられている。
一方で、メキシコ政府は2022年4月に鉱業法を改正し、リチウムを国有化した(2022年4月21日記事参照)が、AMLO大統領は3月1日の早朝記者会見で、「リチウムは国有化したが、(リチウムが多く採掘される)ソノラ州で原料調達し、同州にバッテリー工場を建設し、雇用を生み出すのなら、合意に達する(リチウム採掘の許認可を与える)こともできるだろう」とマスク氏に伝えた、と発言した。
発表済みの新工場設立についても、詳細なスケジュールは公表されていないが、同社を取り巻くサプライヤーの進出も含め、業界関係者からはメキシコの自動車業界のさらなる発展に向けた期待が寄せられている(「エル・フィナンシエロ」紙3月21日)。
(注)カナダに本社を置き、ブラジルでバッテリー用リチウム金属を生産する鉱山会社。
(渡邊千尋)
(メキシコ、米国)
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