米テスラ、リチウム鉱山開発のカナダ企業の株式買収を検討
(米国、カナダ、ブラジル)
米州課
2023年02月20日
2月18日(日本時間)付のブルームバーグによると、米国の電気自動車(EV)メーカーのテスラは、ブラジルでバッテリー用リチウム金属を生産しカナダに本社を置く鉱山会社シグマ・リチウムの買収を検討していることが、複数の関係者の話で分かったとしている。17日付ブルームバーグ・リネアによると、シグマ・リチウムの筆頭株主は、同社の共同社長であるブラジルのアナ・カブラル・ガードナーが設立を支援したブラジルのプライベートエクイティファンドのA10インベスチメント。シグマ・リチウムの株式の46%を所有している。シグマ・リチウムの筆頭株主がテスラへの売却を検討する交渉は初期段階で、現時点で両社からのコメントはない。
シグマ・リチウムは2011年に設立されたカナダ・バンクーバーに本拠を置く鉱山会社。子会社シグマ・ミネラソン(シグマ・ブラジル)を通じて、ブラジルのミナスジェライス州首都ベロリソンテから北東800キロのアラスアイ市とイチンガ市に所在する4カ所のリチウム鉱床で100%権益を保有し、塩田を除くリチウム鉱床としては米州最大規模。同社は2021年9月にナスダックに上場しており、今回の報道を受けて2月17日の時間外取引で株価が24.32%急騰した。
同社は4カ所のうち、ジャキシニョナ谷グロタ・ド・シリロでリチウム鉱床を開発し、2023年4月に商業生産を予定している。既にLG エナジーソリューションなどと供給契約を締結していると各紙は報じている。同社は2023年1月にグロタ・ド・シリロ地区のFS調査結果を発表し、従来比60%増の5,480万トン(酸化リチウム品位1.44%)の埋蔵量を確認し、1億5,500万ドルを投じて2023年に年間生産量を27万トン(炭酸リチウム:LCE換算3万6,700トン)から2024年に同76万8,000トン(同10万4,200トン)の約3倍増にする計画を明らかにしている(1月19日同社プレスリリース)。
一方、テスラはEV生産に欠かせないバッテリーを中国のEVバッテリーメーカーCATLやパナソニックから調達するとともに、自社でのバッテリー量産化に必要な重要資源の調達を進めている。ブラジルでは今回のシグマ・リチウム株式買収に加えて、2022年5月にブラジル資源大手バーレとニッケルの長期共有契約を結んでいることが報じられている。
(大久保敦)
(米国、カナダ、ブラジル)
ビジネス短信 bd88b14d14802d45