2022年の欧州商用車市場でも電動車の販売が着実に増加

(EU)

ブリュッセル発

2023年03月20日

欧州自動車工業会(ACEA)は3月15日、EU(マルタ、ブルガリアを除く、注1)における2022年のバスの燃料タイプ別の新車登録台数を発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。電動車(ECV、注2)の販売台数は前年比13.7%増となり、新車全体のうちシェアは12.7%(前年の10.6%から2.1ポイント増)となった(添付資料表1および図1参照)。ECVの販売台数は、EU最大の電動バス市場であるフランスで26.4%増となったほか、2位のドイツ、3位のデンマークでもそれぞれ10.1%増、79.5%増だった。なお、これら3カ国でEU全体の登録台数の半数以上を占めた。燃料タイプ別で最も販売台数が多かったのは前年に引き続きディーゼル車で、台数は前年比7.8%減となったものの、新車全体の67.3%を占めた。

EUのトラック市場でも2022年、ECVの新車登録台数は前年比32.8%増と大きく伸びた(3月8日付ACEAプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2022年もディーゼル車が全体の96.6%を占め、ECVの割合はわずか0.6%ではあるが、前年比0.1ポイント増となり、電動トラックがEUで着実に普及し始めたことがうかえる(添付資料表2および図2参照)。しかし、新たに登録されたECVの半数はドイツで登録されたもので、バスと同様、ECVの普及は一部の加盟国で先行する状況となっている。

EUの小型商用車(バン)市場でも、2022年はECVの販売台数が大きく伸びた年となった(3月1日付ACEAプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。ACEAがEU4大市場と位置付けるドイツ、フランス、スペイン、イタリアの全てにおいて、販売台数は前年比2桁増、EU全体では42.5%増となり、新車登録全体の5.3%(前年の3.0%から2.3ポイント増)を占めた(添付資料表3および図3参照)。バン市場でもディーゼル車は全体の86.0%を占めたが、ECVと対照的に、販売台数は上述の4大市場全てで前年比2桁減、EU全体では21.9%減だった。

商用車市場では依然としてディーゼル車が主流ではあるが、ECVが販売台数を着実に伸ばしていることは、商用車市場でも乗用車市場に続き、電動化が進む予兆を感じさせる。バンについては、EU理事会(閣僚理事会)での正式採択が遅れている(2023年3月9日記事参照)ものの、乗用車・バンの新たな二酸化炭素(CO2)排出基準(2022年10月31日記事参照)が適用になれば、全ての新車をゼロエミッション車とするとした2035年に向けてECVの普及が急速に進む可能性がある。

大型車についても、欧州委員会が2023年2月、CO2排出基準規則の改正案を発表し、ゼロエミッション車への移行を推進する方針を示し(2023年2月16日記事参照)、自動車業界もECVの市場投入を加速させている(注3)。改正案のEU理事会および欧州議会での審議の行方に加え、EUや自動車関連業界が大型車用の充電・充填(じゅうてん)インフラ整備や車両価格といった課題にどのように対応し、電動化を推進するのか注目だ。

(注1)ACEAは、マルタ、ブルガリアについてはデータ入手不可能として、バス、トラック、バンの燃料別新車登録台数の統計に含めていない。

(注2)バッテリー式電気自動車(BEV)、燃料電池自動車(FCV)、レンジエクステンダーEV(EREV)、プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)のこと。

(注3)調査レポート「欧州自動車市場におけるゼロエミッション化関連最新動向」(2022年12月)も参照。

(滝澤祥子)

(EU)

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