モスクワ地下鉄の大環状線が全線開業

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2023年03月15日

ロシア・モスクワ地下鉄の最新の路線である大環状線のうち、未開通だった一部の区間、サビョロフスカヤ駅~エレクトロザボツカヤ駅、ニジェゴロツカヤ~カホフスカヤ駅間が3月1日に開通し、大環状線全線での運行が始まった。2012年の建設開始から11年、2018年の部分開業から5年を経て全線が開通した。全長は70キロで環状地下鉄としては世界最長となる。

写真 大環状線を強調したモスクワ地下鉄路線図(ジェトロ撮影)

大環状線を強調したモスクワ地下鉄路線図(ジェトロ撮影)

同線の開通は、モスクワ市のセルゲイ・ソビャニン市長が2010年の就任以来進める交通網整備とそれによる都市再開発、経済活性化を目的としたもの。モスクワ市政府は公共交通機関網整備の一環として、これまで地下鉄の延伸・新規路線の設置のほか、地上線であるモスクワ中央環状鉄道(MTsK)、モスクワ中央通貫鉄道(MTsD)の整備を進めてきた(2016年10月32019年11月272020年4月1記事参照)。

モスクワ地下鉄は、放射線状に伸びる路線が多い一方、それらの路線を結ぶ路線は市内中心部に近い環状線(5号線)、または地下鉄と連結するモスクワ中央環状鉄道(MTsK)しかなく、環状線の混雑と乗り換え、中心部から離れた地区間の移動時間の短縮が交通政策上の課題となっていた。大環状線の開通により、既存路線利用客の分散効果が期待される。モスクワ市当局は、環状鉄道で20%、地下鉄環状線で25%、放射線状に走る路線22%の混雑緩和を見込むほか、地下鉄利用の増加により道路の混雑も緩和されるとしている(モスクワ市政府発表32日)。

写真 開通記念ラッピングを施した車両(ジェトロ撮影)

開通記念ラッピングを施した車両(ジェトロ撮影)

写真 地下70メートルのホームに降りるエスカレーター(ジェトロ撮影)

地下70メートルのホームに降りるエスカレーター(ジェトロ撮影)

大環状線の全線営業開始に伴う経済効果を指摘する声もある。高等経済学院の大都市交通問題研究センター所長、コンスタンチン・トロフィメンコ氏は「大環状線隣接地域には未活用の工場用地が多くあり、今後それらを活用した産業発展の可能性がある」と指摘する(ベドモスチ32日)。このほか、新駅の近くの住宅販売・賃貸価格はすでに上昇を始めており、今後、新線周辺での住宅新規建設の加速が見込まれている(ノーボスチ通信31日)。

(欧州ロシアCIS課)

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