バイデン大統領が初の拒否権発動、ESG投資規則無効決議に対して

(米国)

ニューヨーク発

2023年03月22日

米国のジョー・バイデン大統領は3月20日、企業年金の投資先にESG(注1)要因の考慮を認める規則の無効を求める決議について、大統領就任後初めてとなる拒否権を発動外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

企業年金の投資先については、2022年11月に米国労働省が投資収益だけでなくESG要因も考慮して投資先を選択できるとする規則を発表し(2022年11月24日記事参照)、すでに発効済みとなっていた。しかし、共和党を中心に規則に対する反発が大きくなり、同規則を無効とする決議が2023年2月28日に下院を通過、3月1日には勢力が拮抗(きっこう)している上院でも民主党のジョー・マンチン議員(ウェストバージニア州)とジョン・テスター議員(モンタナ州)が賛成に回り、50対46で通過した。なお、上院での可決には通常60票以上の賛成が必要となるが、単純過半数で可決できるという議会審査法(Congressional Review Act)の仕組みが利用された(ロイター3月1日)。

米国連邦議会において、両院の共同決議案は、法律案より限定された事項を扱う傾向がある。上下両院の議決後、大統領の署名を経て法律となり、法的拘束力を持つ。一方、大統領には拒否権が与えられている。議会が大統領の拒否権を覆すには、両院で3分の2以上の賛成が必要となる。だが、現在の両院の民主党・共和党の議席数を考えると実現可能性は低く、同規則の効力はこのまま維持される見込みだ。

バイデン大統領が今回拒否権を発動したことで、政権・民主党と共和党との対立構造が一層深まったかたちだ。2024年度の予算教書は3月9日に発表され(2023年3月10日記事参照)、現在、与野党間で調整が行われていることに加え、シリコンバレー銀行(SVB)などの経営破綻を踏まえて大統領が議会に銀行への規制強化を求めている件や(2023年3月14日記事参照)、債務上限対応の問題(2023年2月17日記事参照)も合意のめどが立っていない。議会で懸案となっているこうした案件について、今後より一層の調整の難航が予想される。

(注)ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(企業統治、Governance)の頭文字を取ったもの。これら3つの取り組みに配慮して事業活動を推進しているかどうかは、企業評価を測る1つの指標として使われている。

(宮野慶太)

(米国)

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