米労働省、企業年金の投資先にESG要因の考慮認める規則を最終決定

(米国)

ニューヨーク発

2022年11月24日

米国労働省は11月22日、企業年金の投資先について、投資収益だけでなくESG(注)要因も考慮して投資先を選択できるとする最終規則を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2021年10月に規則案を公表していたが(2021年10月27日記事参照)、その後のパブリックコメントなどの手続きを経て、約1年後の最終決定となった。同規則は今後、官報に公開してから60日後に効力を有する予定となっており、施行は2023年2月ごろとみられている。

米国では、企業年金などの年金基金の運用に対しては「フィデュシャリー・デューティー」(受託者責任)と呼ばれる義務があり、運用で受託者はリスク・リターン分析で合理的と判断した要因に基づいていなければならない。労働省によると、今回の最終規則の重要な変更は、特定の投資や投資方針に対する要因に気候変動やそのほかのESGを考慮した経済的影響が含まれる可能性があることを明確にしたことだ。労働省は発表で「今回発表の規則は(企業年金における)ESGを考慮した投資に関して、不必要な障壁を取り除き、前政権の規則によって生み出された(ESGを考慮した投資への)萎縮効果を終わらせる」と述べている。一方で「ESGを考慮することができるが、必要ということではない」とも述べており(「ペンションズ・アンド・インベストメント」11月22日)、中立的な立場であることも強調した。

足元のESGに関連した投資は、世界的なエネルギー高や高インフレなどに起因した化石燃料への回帰の動きにより低迷している。投資調査会社モーニングスターによると、米国のESGファンドには2022年第1~3四半期(1~9月)に92億ドルの新規の資金流入があったが、これは2021年上半期に記録した390億ドルの資金流入に比べると、4分の1程度だ(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版11月22日)。加えて、共和党知事の州を中心にESG投資を排除する動きもあり、テキサス州は石油・ガス産業への投資を削減した企業と州機関が契約することを禁止する方針を打ち出すなど(「テキサス・トリビューン」紙8月24日)、18州が反ESGの動きを取っているとされる(ブルームバーグ9月29日)。労働省がESG要因の考慮は義務ではないと強調したのも、こうした動きにも配慮したとみられるが、いずれにしろ、今回の最終規則により米国でESG投資の動きが再加速していくか注目される。

(注)ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取ったもの。これら3つの取り組みに配慮して事業活動を推進しているかどうかは、企業評価を測る1つの指標として使われている。

(宮野慶太)

(米国)

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