2月の主な動きは気球問題、ジェトロ月例レポート(2023年2月)

(米国、中国)

米州課

2023年03月23日

ジェトロは3月23日、米国の対中国関連政策についてまとめた2023年2月分の月例レポートを公表した。このレポートは、日本企業が米中関係に関する米国の動向を把握できるよう、2021年7月から毎月分を作成して特集ページに連載している。

2月の米中関係は、2日に国防総省が、米国領空を高高度で航行する中国の偵察気球を追跡していると発表し、4日にサウスカロライナ州沖で撃墜したことをきっかけとして一気に緊張が高まり、外交・安全保障上の問題に発展した。気球の領空内の航空によって、米国は、自国の主権が侵害されたと主張したのに対し、中国は、気象観測用の民間気球が漂流したもので米国の反応は過剰と主張し、非難の応酬となった。ちょうど、2022年8月のナンシー・ペロシ前連邦下院議長の台湾訪問と、それに反発した中国の台湾海峡での大規模軍事演習を巡って、中国は、自国の主権が侵害されたと主張したのに対し、米国は、中国の軍事演習は過剰な反応だと主張したことと、立場を逆に同じ様相を呈した(2022年8月19日記事参照)。

中国に対する具体措置として、米国商務省産業安全保障局(BIS)は10日に、気球の開発や製造に寄与していると判断した中国の企業や研究機関を、輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)に追加するなどの対抗措置をとった(2023年2月13日記事参照)。また、米国連邦議会では、9日に下院で偵察気球を非難する決議を全会一致で採択した(2023年2月10日記事参照)。連邦議会では、118議会が開会した1月以降に上下両院で中国への対抗手段を盛り込んださまざまな法案が提出されているが、2月に入って、これら法案に関する委員会レベルでの審議が本格的に始まった。委員会が開催する公聴会に招かれた証人の多くは、米国が中国に対してより厳しい姿勢で対抗していくべきとの見解を述べており、今後の法案審議にあたって、中国に対する強硬な姿勢が共通認識となる可能性がある。

なお、気球問題を受けて、アントニー・ブリンケン国務長官は3日に、2月5~6日に予定されていた訪中の無期延期を発表した。一方で、ブリンケン国務長官は18日に中国の王毅共産党中央政治局委員とミュンヘン安全保障会議で非公式に会談する機会を持ち、気球に関する米国の立場を直接説明するとともに、米国の対中国基本政策は変わらないことや、状況が整い次第訪中を行うことなどを伝え、ハイレベルでの対話のチャンネル維持に努めようとしている姿勢もみせた(2022年2月22日記事参照)。

米国の対中政策・措置や米国側から見た米中関係の動向について、行政府、連邦議会、産業界、学会に分けて解説する月例レポートは、こちらの特集ページからさかのぼって閲覧が可能。米中関係に関する中国の動向も確認できる。

(葛西泰介)

(米国、中国)

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