中国外交トップの王毅氏、ブリンケン米国務長官と非公式接触、気球撃墜に抗議

(中国、米国)

北京発

2023年02月22日

中国外交部は2月19日、ドイツで開催されたミュンヘン安全保障会議に参加した外交トップの王毅・共産党中央政治局委員が米国のアントニー・ブリンケン国務長官と非公式に接触したと発表した(注1)。接触は米国の「願い」(注2)に応じて現地時間2月18日に行われ、王政治局委員は米国による中国の気球撃墜事件(2023年2月17日記事参照)について厳正な立場を表明し、米国が考えを改め、武力の乱用で中米関係にもたらした損害を直視し、解決することを求めたとしている。

外交部によると、王政治局委員は、米国の行為は典型的な武力の乱用であり、国際慣習と国際民間航空条約に明らかに違反しているとして、強烈な不満と厳正な抗議を表明した。その上で、米国こそが世界最大の監視・偵察国家であり、高高度気球はたびたび違法に中国上空を飛行しており、中国を中傷し、おとしめる資格はないと批判した。

また、ウクライナ侵攻について、中国とロシアの関係は独立国の主権の範囲内のことだとして、米国の口出しや脅迫・抑え込みは受け入れないと主張した。台湾についても、米国は「台湾独立」を支持しないという立場を実行に移すべきとした。

2月18日の新華社報道によると、王政治局委員は会議に関する記者会見で、気球事件は米国による「政治的コメディー」であり、撃墜は「ヒステリーに近い、100%の武力乱用だ」と非難したとされる。

その上で、気球事件が両国間の大きな問題となっていることについて「中国に対する米国の誤認識と戦略の誤りが原因」とし、中国の対米政策は相互尊重、平和共同、協力・ウィンウィンの関係を基本に、異なる社会制度と歴史・制度を持つ大国同士が付き合うための正しい道を探るものとの認識を示した。

一方で、米国の対中政策は中国を最も厳しい地政学的な挑戦者・競争相手と見なすもので、この誤った中国観に基づいて中国を抑え込み、打撃を与えようとするものだと非難した。

今回の接触について、報道では、米国の「願い」に応じたものとの点などから、米国はウクライナ侵攻から1年が過ぎようとする中で「大決戦」を迎えるに当たり、中米関係の悪化が中国とロシアの接近をもたらすことを防ぐため、事態の沈静化を図ったものという見方が紹介されている(「看看新聞」2月20日)。

(注1)米国側の発表は2023年2月21日記事参照

(注2)外交部の発表原文では、中国語の表現として中立的な「要求」ではなく、目上の者や同等の者に丁寧に依頼する際に使用する「請求」が使われている。

(河野円洋)

(中国、米国)

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